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インフルエンザ診療の日本での実態
2014年から2020年度の全国レセプトデータを用いた研究

2023年10月5日
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

研究成果のポイント

  • 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM)国府台病院とセンター病院などの共同研究により、全国規模のインフルエンザ診療の実態を調べました。
  • 2017年度のインフルエンザ治療薬の処方人数は推定1339万人、薬剤費480億円であり、検査回数は3203万回、検査費471億円でした。
  • 2017年度はラニナミビルを処方された患者が48.1%と最多でしたが、2018年度は発売されたばかりのバロキサビルが40.8%を占めて最多でした。
  • 2018年度は処方患者数の37.6%を20歳未満が占め、65歳以上の高齢者は12.2%を占めました。人口当たりの処方が最も多い5-9歳では、4人に1人が処方された計算になりました。
  • 今まで日本になかった大規模なデータであり、インフルエンザだけでなく、新型コロナも含め、今後の感染症の臨床や医療政策を考えるうえで重要な基礎データになると考えられます。
  • 本研究は国際電子ジャーナルPLOS ONEに掲載されました。

背景・目的

日本では2000年からザナミビル(商品名リレンザ)、2001年オセルタミビル(先発品の商品名タミフル)、2010年ラニナミビル(商品名イナビル)とペラミビル(商品名ラピアクタ)、2018年バロキサビル(商品名ゾフルーザ)が季節性インフルエンザに処方されています。ザナミビルとラニナミビルは吸入薬、オセルタミビルとバロキサビルは内服薬、ペラミビルは注射薬です。アマンタジン(先発品の商品名シンメトレル)とファビピラビル(商品名アビガン)は今回対象としていません。

新型コロナの影響で変わった部分もありますが、日本では冬に風邪症状で受診すると、多くの場合にインフルエンザ迅速検査を行い、陽性なら若くて持病がない人も含めてほとんどの人にインフルエンザの治療薬が処方されていました。医師も患者も多くの人がこのことを当たり前と考えていますが、世界の治療薬の半分以上が日本で処方されていると言われたこともあり、日本の診療には特有の状況があると指摘されています。

季節性インフルエンザは5類感染症であり、指定された病院・クリニックから患者数が報告され、国立感染症研究所などから最近の感染状況が報告されたり、毎年1年間の流行状況をまとめたデータが公表されたりしています。ただ、患者数の推計、年齢、性別、地域、入院、死亡などのデータはありますが、治療薬についてのデータは含まれていません。

全国の診療報酬データベースをもとに、患者数、費用、治療薬の選択、性差、年齢差、地域差などについて、日本でのインフルエンザ検査や治療の実態の一端を明らかにすることを目的に研究を行いました。

方法

レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB: National Database)は日本の保険診療の請求データの大部分をカバーしており、個々の患者さんの性別、年齢や、受けた検査、処方、手術などのデータが含まれます。NDBオープンデータはNDBを集計して公開したもので、日本全体で1年間に検査が何回行われたか、薬が何錠処方されたか、などがわかり、その男女別、年代別、受診したクリニック・病院の地域別の内訳などもわかります。今回は2014年度から20年度のNDBオープンデータを用いた記述疫学研究を行いました。

個人単位のデータを扱えるNDBと違い、NDBオープンデータでは集計されたデータのみであり、処方された患者数はわかりません。ただ、インフルエンザの治療薬は使い方が決まっている部分が多く、オセルタミビルであれば1日2カプセルで5日間が標準的な処方です。例えば2018年度に北海道でオセルタミビルカプセルが36551カプセル処方されていれば、推定処方人数は3655人となります。また小児では体重当たりの処方になるため、日本の年代別・男女別の平均体重を用いて処方人数を推定しています。

実際に風邪症状があって医療機関を受診し、インフルエンザと診断されて治療薬を処方される場合の医療費は様々な要素を合計する必要がありますが、今回は単に治療薬の薬剤費と迅速抗原検査の検査費のみを集計しています。 家族が感染した場合などのインフルエンザ予防の処方は保険診療ではないため、NDBオープンデータには含まれていません。

問合せ先

研究に関するお問い合せ

国立国際医療研究センター(NCGM)国府台病院
総合内科診療科長 酒匂 赤人(さこう あかひと)
電話:047-372-3501(代表)
〒272-8516 千葉県市川市国府台1-7-1

報道に関するお問い合せ

国立国際医療研究センター(NCGM)企画戦略局 広報企画室
Tel:03-3202-7181
E-mail:press(at)hosp.ncgm.go.jp
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