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多民族ゲノムワイド関連解析による小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群の新たな疾患感受性遺伝子の同定―免疫因子と非免疫因子の両方が病因に関与―

2023年5月9日
国立大学法人神戸大学
国立国際医療研究センター
兵庫県立こども病院

ポイント

  • ネフローゼ症候群 注1は、尿中に大量のタンパク質が漏れ出て血液中のタンパク質が極端に少なくなる、小児の慢性腎疾患で最も頻度の高い病気です。指定難病及び小児慢性特定疾病に指定されているが、その原因は明らかではありません。
  • 小児ネフローゼ症候群の大半は、ステロイドに反応して寛解となるステロイド感受性ネフローゼ症候群 注2であり、何らかの遺伝的な素因(疾患感受性遺伝子 注3)を持つ人に、感染症などの免疫学的な刺激が加わって発症すると考えられており、これまでHLAクラスIIを含む4つの疾患感受性遺伝子が報告されています。
  • 我々は、ボストン小児病院のMatthew G. Sampson博士らとの国際共同研究で、小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群の多民族によるゲノムガイド関連解析(GWAS)注4のメタ解析注5等を行い、上記の4つの既知の遺伝子に加えて、新たに7つの疾患感受性遺伝子を同定し、それらの遺伝子の多くは、免疫に関連するだけでなく腎臓にも関連する遺伝子であることを明らかにしました。
  • 本研究成果によって、小児ネフローゼ症候群の遺伝学的背景の理解がさらに進展し、発症機序や病態生理の解明及び新たな治療法の開発に貢献することが期待できます。

研究内容

ボストン小児病院腎臓内科のMatthew G. Sampson准教授、ソルボンヌ大学腎臓内科のPierre Ronco教授、コロンビア大学腎臓内科のSimone Sanna-Cherchi准教授らと国際共同研究グループを組織し、日本人987例を含む世界の6つの民族からなる計2,240例の小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群とそれぞれの民族の健常コントロール計36,023例を対象として、多民族GWASメタ解析や民族特異的GWASメタ解析等を実施し、HLAクラスIIなどの4つの既知の疾患感受性遺伝子に加え、新たに7つの疾患感受性遺伝子を同定しました。

今後の展開

本研究成果によって、小児ネフローゼ症候群の遺伝学的背景の理解がさらに進展し、発症機序や病態生理の解明及び新たな治療法の開発に貢献することが期待できます。


用語解説

注1.ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、尿にタンパク質がたくさん出てしまうために、血液中のタンパク質が減り(低タンパク血症)、その結果、むくみ(浮腫)が起こる疾患である。明らかな原因がわからないものを、一次ネフローゼ症候群と呼ぶ。国の指定難病及び小児慢性特定疾病の一つ。

注2.ステロイド感受性ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群のうち、ステロイド連日投与開始後4週間以内に完全寛解する(症状が治まる)もの。

注3.疾患感受性遺伝子
多因子疾患は、様々な遺伝子因子と環境因子が組み合わさることで発症すると考えられており、これらの発症に関わる遺伝子を疾患感受性遺伝子という。

注4.ゲノムワイド関連解析(GWAS)
ヒトゲノム全体をカバーする一塩基多型(SNP)のうち、タイピングができるSNPアレイを用いて遺伝子型を決定し、主にSNPの頻度と、病気や量的形質との関連を統計的に調べる方法のこと。

注5.メタ解析
複数の独立した研究データを収集・統合し、統計解析すること。

問合せ先

<研究に関するお問い合わせ>
兵庫県立こども病院 院長、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児先端医療学分野
(連携大学院)客員教授 飯島 一誠
TEL:078-975-7300

<報道に関するお問い合わせ>
神戸大学総務部広報課
TEL:078-803-5453
E-mail:ppr-kouhoushitsu(a)office.kobe-u.ac.jp

国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
Tel:03-3202-7181
E-mail:press(a)hosp.ncgm.go.jp

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