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ワクチン接種及び過去感染で誘導された新型コロナウイルスの スパイクタンパク質に対する抗体価とオミクロンBA.5感染リスクとの関連

2023年4月4日
国立国際医療研究センター

ポイント

  • 感染前の新型コロナウイルスに対する抗体価が高いことはオミクロンBA.5株への感染リスクの低下と関連していた。
  • オミクロン5株に対する高い感染防御能(>80%)はハイブリッド免疫(ワクチン接種+過去感染)を有する集団でのみ到達可能であった。

発表内容

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期流行を経た今、新型コロナウイルスに対する免疫状態は人によって大きな違いがみられます。ウイルスに感染することや、ワクチンを接種することで体内で抗体が産生されますが、感染してからの経過日数や、ワクチンの接種回数、接種したワクチンの種類、最後に接種してからの経過日数によって、血中の抗体価が異なることが知られています。

2022年夏、日本でオミクロンBA.5株が大流行した際、週あたりの新規感染者数は世界最多を記録しました。ワクチン接種者や感染既往者は、オミクロンBA.5に感染するリスクが低いことが報告されていますが、ワクチンや過去感染で誘導された抗体とオミクロンBA.5感染との関連を定量的に調べた研究はありませんでした。

国立国際医療研究センター(NCGM)の山本尚平上級研究員・溝上哲也部長(臨床研究センター疫学・予防研究部)、大曲貴夫センター長(国際感染症センター)らの研究グループは、2022年6月にNCGM職員を対象に血中の新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体価(以下、抗体価)を測定し、その後9月までのオミクロンBA.5流行期における感染リスクとの関連を調べました。抗体価は、アボット社試薬(The AdviseDx SARS-CoV-2 IgG II assay, ARCHITECT)で測定しました。

本研究の調査人数は、2160人(調査時点で感染歴がない集団2165人、調査時点で感染歴のある集団445人)で、その内訳は、女性71%、年齢の中央値37歳、ワクチン3回接種者92%、感染既往者16%でした。観察期間中、288人がCOVID-19と診断されました(13.8 / 1万人・日)。集団全体において、感染前の抗体価が高いほど感染防御率(注1)が高いという関連がみられ、抗体価が1000 AU/mL高くなると防御率は3.7%上昇していました。また、未感染者と既感染者とで抗体価と感染リスクとの関連の強さには違いがみられ、50%の感染防御率を得るため必要な抗体価は既感染者で17000 AU/mLであったのに対し、未感染者で27000 AU/mLでした。80%の感染防御率は既感染者では50000 AU/mLで到達した一方、未感染者では最大抗体価(80000 AU/mL)でも到達しませんでした。同じ抗体価であっても、未感染者に比べて既感染者はより強い免疫能を獲得していることが伺えます。

本研究から、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体価が高いことはオミクロンBA.5感染リスクの低下と関連していること、またオミクロンBA.5に対する高い感染防御能はハイブリッド免疫(ワクチン接種+過去感染)によって獲得されることが明らかになりました。なお、本研究の抗体測定はオミクロン株に対する特異的な抗体を誘導する2価ワクチンが開始される前に行われており、結果を解釈する上で留意する必要があります。

本研究成果は、2023年3月16日に、JAMA Network Open誌にて公表されました。