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顎関節の退行性病変に関わる新規分子の同定に成功
~顎関節の退行性病変のバイオマーカーとして新たな臨床検査や治療法の開発に期待~

2023年2月22日

 北海道大学
国立国際医療研究センター

ポイント

  • 女性の顎関節の退行性病変の病態生理に関わる新たな分子の同定に成功。
  • 血清のCCL5が顎関節退行性病変(いわゆる進行性下顎頭吸収症)患者で上昇していることを解明。
  • 顎関節の退行性病変のバイオマーカーを用いた、新たな臨床検査や治療法の開発に期待。

概要

北海道大学大学院歯学研究院の飯村忠浩教授(薬理学教室)と北川善政教授(口腔診断内科学教室)らの研究グループは、国立国際医療研究センター病院の丸岡豊副院長(歯科・口腔外科診療科長)らとの共同研究により、女性の顎関節*1退行性病変に関わる分子としてCCL5*2を同定しました。

顎関節の退行性病変は、顎関節を構成する構造体である下顎骨関節突起の病的吸収に伴う形態変化が特徴で、口腔顔面痛や、顎を動かした際の雑音、口の開閉に困難を起こす多因子性の疾患です。進行すると咬み合わせの変化や顔貌の変形が生じ、顎口腔領域の機能性・審美性ともに障害されます。

これまで、顎関節の退行性病変は、臨床での診査・問診や画像検査でしか評価をすることができず、病態の進行を予測・評価することは困難でした。今回、研究グループは、比較的進行した顎関節退行性病変(いわゆる進行性下顎頭吸収症と考えられる症例)の患者血清を解析し、CCL5という分子が患者の血清において上昇していることを明らかにしました。

また、CCL5だけでなく、血清や尿中の骨代謝*3に関わる分子や炎症性分子の量も同時に解析し、比較的進行した顎関節の退行性病変において、比較的若い女性患者では骨代謝のわずかな亢進が、高齢の女性患者では炎症性変化の亢進が、この病気に関与することを解明しました。本研究のさらなる発展により、血清中のCCL5量や他のバイオマーカー*4を組み合わせた臨床検査によって、顎関節の退行性病変の予測や診断、予後の診断、さらには新たな治療法の開発に繋がることが期待されます。

なお、本研究成果は、2023年2月1日(水)公開のInternational Journal of Molecular Sciencesにオンライン掲載されました。