メニューにジャンプコンテンツにジャンプ

トップページ > 最新情報 > 新着情報 > COVID-19患者のECMOでのウイルス漏出に対する安全性の向上

COVID-19患者のECMOでのウイルス漏出に対する安全性の向上
~ECMO人工肺カバーの開発~

Safety improvement of COVID-19 patients against virus leakage in ECMO
- Development of ECMO oxygenator cover -

2021年9月21日
 株式会社レイ
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

株式会社レイ(本社:東京都千代田区、代表取締役:佐藤豊美、以下「レイ」)と国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(東京都新宿区、理事長:國土典宏、以下「NCGM」)は、臨床工学技士から提起された、体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を使用する際に問題となる人工肺からのウイルス飛散を軽減するため、医工連携事業の一環として人工肺カバーを共同で開発しました。医療安全の確保に向けて、レイではECMO人工肺カバー「サクピタ」を上市しました。

Ray Co., Ltd (Chiyoda-ku, Tokyo, CEO Toyomi Sato, hereinafter "Ray") and the National Center for Global Health and Medicine (Shinjuku-ku, Tokyo, President: Norihiro Kokudo, hereinafter "NCGM") jointly developed an oxygenator cover as part of a medical-industrial collaboration project to reduce virus dispersal from oxygenators, which is a problem raised by clinical engineers when using extracorporeal membrane oxygenation (ECMO). In order to ensure medical safety, Ray has started manufacturing the ECMO oxygenator cover "Sakupita".

研究背景・概要

COVID-19重症肺炎患者は、重症化が進行し人工呼吸器による自己肺でのガス交換が困難となった際に、血液をポンプにより体外へ導き人工肺を介して血液と直接ガス交換が行われるECMOを必要とする場合があります。ECMOの人工肺では中空糸膜を隔ててガス交換が行われるため、長時間の使用により膜の疎水性が失われ、血漿が漏れ出る事が知られています。また、COVID-19重症肺炎患者では、ウイルス血症を呈している症例も確認され人工肺を通じて体外(病室内)にウイルスが排出される可能性について懸念されていました。そのため、今回の研究ではECMOを実施した患者5名の人工肺に対してPCR検査を行い、内3名の人工肺排気口(呼気側)からSARS-CoV-2 RNAが検出されたことを確認しました。*)

COVID-19患者のECMOでのウイルス漏出に対する安全性の向上

開 発

人工肺排気口(呼気側)に対してSARS-CoV-2ウイルス量(PCR)を調査すると共に、安全対策として日本体外循環医学会など各関係学会からも進言されている人工肺にカバー等をかけ汚染拡大を防ぐ方法を模索していました。しかしながら、手作りカバーはスタッフの業務負担となり得るだけでなくポリエチレン等の素材ではウイルスが透過する可能性について懸念事項となりました。



COVID-19患者のECMOでのウイルス漏出に対する安全性の向上

製 品

開発製品「サクピタ」はメラNHPエクセラン用で、カバー部分は抗ウイルス素材「サンエー化研社製バイプロシート」を使用しております。
製品は人工肺上部にテープで装着する仕組みで、装着に要する時間は1分程度と医療現場の労力削減に大きく貢献することが期待されます。

COVID-19患者のECMOでのウイルス漏出に対する安全性の向上

販売の取り扱いは泉工医科工業株式会社です。
製品名:サクピタ
価格:1個 9,980円(税抜き:1ケース5個入り)
販売元およびお問い合わせ先:泉工医科工業株式会社商品企画 循環器部 03-3812-3254

研究の成果と意義・今後の展開

個人用保護具(Personal Protective Equipment, PPE)の適切な使用とカバーにより、COVID-19患者のECMO管理に関わる医療スタッフは、現在までCOVID-19に感染したという報告はありません。医療現場ではより安全に、より効果的かつ効率的なカバーが望まれ、今回開発した人工肺カバーは医療スタッフの負担の軽減につながると考えています。
今後も臨床ニーズにより更なる効果や利便性向上面で、引き続き研究開発を継続していく予定です。

論文掲載

本研究成果は、2021年5月に『ASAIO Journal』でFree Accessとして掲載されました。

  • タイトル
    SARS-CoV-2 Leakage from the Gas Outlet Port during Extracorporeal Membrane Oxygenation for COVID-19.
    和名)COVID-19の体外式膜型人工肺中のガス出口ポートからのSARS-CoV-2漏出
  • 著者
    Ogawa T, Uemura T, Matsuda W, Sato M, Ishizuka K, Fukaya T, Kinoshita N, Nakamoto T, Ohmagari N, Katano H, Suzuki T, Hosaka S.
  • 所属
    国立国際医療研究センター 臨床工学科、救急科、感染症科
    国立感染症研究所
  • 掲載誌
    ASAIO J. 2021;67(5):511-516.
    https://doi.org/10.1097/mat.0000000000001402

本件に関するお問い合わせ先

  • 論文に関するお問い合わせ先
    国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
    臨床工学科 小川 竜徳(Ogawa Tatsunori)
    Eメール:togawa[at]hosp.ncgm.go.jp
  • 本開発案件に関するお問い合わせ先
    株式会社レイ
    佐藤 豊美(さとう とよみ)
    E メール:ray.healthcareandwellness[at]gmail.com
  • 取材に関するお問い合わせ先
    国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
    広報企画室 広報係
    担当:西澤 樹生(にしざわ たつき)
    TEL:03-3202-7181(代表)  ※9:00~17:00(平日のみ)
    Eメール:press[at]hosp.ncgm.go.jp

メールアドレスは[at]の部分を通常のアットマークに変換して下さい。