メニューにジャンプコンテンツにジャンプ

トップページ > 最新情報 > 新着情報 > 国内最大の新型コロナウイルス感染症レジストリを使って“小児コロナ入院患者”の実態を解明

国内最大の新型コロナウイルス感染症レジストリを使って“小児コロナ入院患者”の実態を解明
~多くは無症状・軽症。無症状であっても入院は比較的長期間に及んでいた~

2021年9月10日

国立成育医療研究センター
国立国際医療研究センター

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)感染症科の庄司健介(医長)は、国立国際医療研究センター(所在地:東京都新宿区戸山、理事長:國土典宏)の研究チームと合同で、小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析しました。これは、国立国際医療研究センター(主任研究者:大曲貴夫)が運営している国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリ「COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)」注1を利用したもので、本レジストリを使用した小児患者における分析は今回が初めてです。本研究は、2020年1月から2021年2月までの間に登録された18歳未満の小児新型コロナウイルス感染症入院例1,038人を対象に実施しました。その結果、無症状の患者は308人(30%)、何らかの症状があった患者は730人(70%)で、症状のあった患者のうち、酸素投与を必要としたのは15人、死亡例は0人と、多くは酸素投与など特別な医療行為を必要としない軽症であることが分かりました。しかし、入院期間の中央値は8日と、小児患者の入院が比較的長期間に及んでいる実態も明らかになりました。これらの分析結果は、限りある医療リソースを有効に活用していくために、とても貴重な情報といえます。

2つのナショナルセンター注2が連携して取り組んだ本研究結果は、米国小児感染症学会の機関誌であるJournal of Pediatric Infectious Disease Society (JPIDS)に公開されました。

※本研究は、デルタ株がまだ日本に存在しない時期に実施されているため、小児に対するデルタ株の影響については評価できません

国内最大の新型コロナウイルス感染症レジストリを使って“小児コロナ患者”の実態を解明

注1:COVID-19 Registry Japan
国立国際医療研究センター大曲貴夫(国際感染症センター長)が主任研究者を務め、新型コロナウイルス感染症において重症化する患者の特徴や経過など、様々な点について明らかにすることを目的とした研究です。患者の生年月日や入退院日などの「基本情報」、症状や意識レベル、酸素療法の状況といった「臨床情報」など、様々な情報を集めており、新型コロナウイルス関連のデータベース(レジストリ)としては国内最大のものです。

注2:ナショナルセンター(国立高度専門医療研究センター)
高度先駆的医療の研究・開発・普及、医療従事者の研修および、情報発信等を総合的・一体的に行うための中核的な機関。国立がん、国立循環器、国立精神・神経、国立国際、国立成育、国立長寿の6つがあります。


プレスリリースのポイント

  • 2020年1月~2021年2月に登録された小児の新型コロナウイルス感染症患者の多くは、無症状または軽症でした。
  • 酸素投与を必要とした患者は15人と、症状のあった患者全体の2.1%でした。
  • ほとんどが無症状、または軽症であるにもかかわらず、入院期間の中央値は8日でした。今後の小児新型コロナウイルス感染症の入院適応を考える上で貴重なデータといえます。
  • 2歳未満や13歳以上の患者、基礎疾患のある患者は、何らかの症状が出やすい傾向にあることが分かりました。今後の小児に対する新型コロナワクチン接種対象者について議論していく上で参考になる所見であると考えられます。
  • 38℃以上の熱が出た患者は、症状のあった患者(730人)のうち10.3%(75人)でした。
  • 13歳~17歳の患者(300人)の約20%に、味覚・嗅覚異常が見られました。

背景・目的

小児の新型コロナウイルス感染症は軽症が多いことは知られていましたが、日本において入院した患者にはどのような症状が見られ、どのくらい入院していたかなどの情報は限られていました。さらに、「症状がない」患者と「症状がある」患者の、患者背景にどのような違いがあるのかについても分かっていませんでした。

COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)は日本最大の新型コロナウイルス感染症関連のレジストリですが、これまで小児患者に関する解析は行われていなかったこともあり、小児における新型コロナウイルス感染症の疫学的・臨床的な特徴の解明が求められていました。

研究概要・結果

研究対象

2020年1月~2021年2月の間にCOVID-19 Registry Japan注1に登録された18歳未満の新型コロナ患者。

研究方法

COVID-19 Registry Japanに登録されている、患者の細かな症状、入院期間、患者背景などのデータを集計・分析しました。

研究結果

  • 期間中に36,460人の患者が登録され、そのうち研究対象となった18歳未満の患者は1,038名でした。
  • 入院時に全く症状がなかった患者は308名(29.7%)でした。これは、隔離目的や、保護者が入院してしまい、子どもの面倒を見る人がいないなどの社会的理由での入院例が多く存在することが示唆されます。
  • 何らかの症状があった患者(730名)のうち、酸素投与を必要とした患者は15名(2.1%)でした。また、死亡した患者は0人で、この期間の小児新型コロナウイルス感染症は極めて軽症であったと言えます。
  • 無症状者と比べると、症状のある患者では、「2歳未満」「13歳以上」「何らかの基礎疾患のある患者」の割合が高くなっていました(ただし、基礎疾患のある患者の割合については統計学的な有意差はありませんでした)。
  • 38℃以上の発熱は、症状のある患者の10.3%にしか表れませんでした。一方で、特徴的な症状の一つである味覚・嗅覚異常は13歳以上の小児において20%以上に表れました。
  • 入院期間の中央値は8日で、無症状者、有症状者で変わりませんでした。医療的ケアが必要ない無症状の患者に対しても、長期間の入院させていたことが分かりました。

国内最大の新型コロナウイルス感染症レジストリを使って“小児コロナ患者”の実態を解明

国内最大の新型コロナウイルス感染症レジストリを使って“小児コロナ患者”の実態を解明

今後の展望・発表者のコメント

今回の研究により、日本の小児新型コロナウイルス感染症の入院症例の実態が明らかになりました。今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待されます。また、今回の研究はデルタ株の流行が始まる前のデータであるため、今後デルタ株が小児に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考えられます。

発表論文情報

  • 和文タイトル:「小児COVID-19入院例の臨床的特徴:COVID-19 Registry in Japanからの報告」
  • 英文タイトル:「Clinical Characteristics of Hospitalized COVID-19 in Children: Report from the COVID-19 Registry in Japan」
  • 著者名
    庄司健介1、秋山尚之2、都築慎也2、松永展明2、浅井雄介2、鈴木節子3、岩元典子3船木孝則1、大曲貴夫2, 3
  • 所属
    1. 国立成育医療研究センター感染症科
    2. 国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター
    3. 国立国際医療研究センター国際感染症センター
  • 掲載誌:Journal of Pediatric Infectious Disease Society
    https://academic.oup.com/jpids/advance-article/doi/10.1093/jpids/piab085/6364943?guestAccessKey=2e298e55-f53b-4794-b98e-9d8afc1e0c86

特記事項

本研究は厚生労働科研費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業(19HA1003)にて実施されました。

プレスリリースに関するお問い合わせ先

本リリースに関するお問合せ先

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
企画戦略局 広報企画室 村上・近藤
電話:03-3416-0181(代表)
E-mail: koho@ncchd.go.jp

COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)に関する問い合わせ先

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
企画戦略局 広報企画室 西澤
電話:03-3202-7181(代表)
E-mail: press@hosp.ncgm.go.jp