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本邦のCOVID-19回復者における心筋障害について
-血清高感度トロポニンTと心臓超音波検査による解析-

2021年4月28日
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

研究成果のポイント

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した患者209例を対象に血清高感度トロポニンT(high sensitivity Troponin T: hs-TnT)と心臓超音波検査による心機能を調べました。135例(65%)でhs-TnT陽性であり、hs-TnTが高いほど心臓超音波検査の左室長軸ストレイン(left ventricular global longitudinal strain: LVGLS)の低下を認めました(1) 。ドイツの研究論文では「hs-TnTと心臓MRIによるCOVID-19回復者の心筋傷害が71%」と報告されていますが(2) 、日本でも高頻度に心筋傷害が残存すること、心臓MRIより施行が容易な心臓超音波検査のLVGLSの有用性を示しました。COVID-19の既往は将来の心血管イベント発症のリスクになる可能性もあり、hs-TnT陽性、LVGLS低下では長期的なフォローアップが必要と考えられます。

背 景

全世界でCOVID-19は猛威を振っていますが、Long COVIDと言われる回復期の後遺症が問題となってきており、心臓MRI検査などでの心筋障害の合併が報告されています。しかし、本邦におけるCOVID-19の回復期における心筋障害の頻度や程度についての報告はまだありませんでした。

概 要

研究名

本邦におけるCOVID-19回復者の心筋障害についての検討
Myocardial injury in patients recovered from COVID-19 in Japan

方 法

2020年5月1日から9月30日の間に、COVID-19から回復し、血液検査と心臓超音波検査を施行された患者を対象に、後ろ向きに高感度トロポニンTの測定と心臓超音波画像の解析を行いました。

主要評価項目

心臓超音波検査による左室機能(左室駆出率、左室長軸ストレイン)、右室機能(三尖弁輪収縮期移動距離、右室自由壁長軸ストレイン)、高感度トロポニンT

対象数

209名

結果

患者の平均年齢は45歳、発症から回復後検査までの平均日数は67.9日、hs-TnTは135例(65%)で陽性でした。hs-TnTの検出感度未満(<3pg/mL)と検出感度以上を中央値(5pg/mL)で分けた2群の合計3群で心機能を比較したところ、左室駆出率には差がなかったものの、hs-TnTの値が大きいほど有意に左室機能の指標であるLVGLSの低下を認めました(-21.8 ± 1.9 %, 20.7 ± 1.8 %, and 19.0 ± 2.2 %; p < 0.001)。

コメント

今回の研究結果からは、本邦においてもCOVID-19回復者に高頻度に軽微な心筋傷害を合併している可能性があり、さらに心臓MRIより施行が容易な心臓超音波検査と血液検査で心筋傷害を検出できる可能性が示唆されました。COVID-19の既往が心筋梗塞や心不全などの心血管イベント発症のリスクになる可能性もあり、心筋傷害のある症例では長期的なフォローアップが必要と思われます。本研究の対象年齢は20歳から69歳であり、高齢の方や心血管病の既往を有する場合では、心筋傷害を有するリスクがさらに高くなることも考えられます。

参 照

(1) Hayama H, Ide S, Moroi M, et al. Elevated high-sensitivity troponin is associated with subclinical cardiac dysfunction in patients recovered from coronavirus disease 2019. Global Health & Medicine 2021;3(2):95-101.
(2) Puntmann VO, Carerj ML, Wieters I, et al. Outcomes of Cardiovascular Magnetic Resonance Imaging in Patients Recently Recovered From Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). JAMA cardiology 2020;5(11):1265-1273.

用語解説

ストレイン:心臓超音波検査において最も鋭敏に心機能低下を検出できる手法。

プレスリリースに関するお問い合わせ先

《研究に関するお問合せ先》
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
循環器内科
担当:廣井 透雄(ひろい ゆきお)
電話:03-3202-7181(内線 4528)<9:00~17:00>(平日のみ)
E-mail: yhiroi@hosp.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

《取材に関するお問合せ先》
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
企画戦略局 広報企画室 広報係
担当:西澤 樹生(にしざわ たつき)
TEL:03-3202-7181(代表)内線:5097  <9:00~17:00>(平日のみ)
Eメール:press@hosp.ncgm.go.jp