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ナショナルセンター・バイオバンクネットワークと日本製薬工業協会加盟企業が疾患別情報統合データベースの構築・活用に係る産学官連携を開始―プレシジョンメディスン・予防・先制医療の早期実装に向けて―

2021年1月25日

日本製薬工業協会
ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)

報道関係 各位

ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(以下、NCBN)と日本製薬工業協会(以下、製薬協)会員企業の7社は、疾患別情報統合データベース(以下、疾患別情報統合DB)の構築および利活用に関する共同研究について、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の産学官共同臨床情報利活用創薬プロジェクト(GAPFREE)に応募し、採択されました。

これにより、NCBNが保有している高品質な臨床情報に付随した試料に対し、ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム等の多層的オミックス解析※1を実施し、解析結果に検査値や画像データ等の臨床情報を突合させる仕組みとして疾患別情報統合DBを産学官共同で構築します。

構築した疾患別情報統合DBの利活用により、疾患の理解をより深め、臨床現場に還元するとともに、疾患バイオマーカー・創薬ターゲット探索を通じた革新的医薬品の創出、さらにプレシジョンメディスンや予防・先制医療の実現に向けて産学官共同研究に取り組んで参ります。

内 容

近年、質の担保された臨床情報と紐付けられた患者由来の試料から得られた種々のオミックスデータをもとに、病態を緻密に体系的かつ網羅的に解析することで創薬に結び付ける動きが盛んになっています。欧米には、国家レベルで公的管理されているデータベース(以下DB)が存在し、企業もアクセス可能な環境にありますが、保管されているデータはゲノムデータと基本的な臨床情報に留まっているDBが多い状況です。日本では政府主導による全ゲノム解析等実行計画の検討が進められゲノム情報を活用した創薬が期待されています。それに加えて、多層的オミックスデータと臨床情報が連結された疾患別情報統合DBの構築が望まれています。

このようなDBを構築するためには、前提として、質の高い診断情報が付随した患者試料が入手できること、さらに疾患ごとの特徴に応じたオミックス解析を行うことが必要です。患者試料の収集には、確定診断症例から経時的に試料を収集する手法や、多数の典型症例から試料を選択収集する手法があります。いずれの手法においても、高精度な診断能と豊富な臨床情報および高度に品質管理された試料が求められますが、国内でそれらの条件を満たす機関は限られています。臨床の中心となる厚生労働省所管の国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)のバイオバンク機能からなるNCBNはそれらの条件に該当しており、疾患別情報統合DBの構築を目指す本研究では、NCBNのバイオバンク試料の利用は大きな強みになります。一方、多層的オミックス解析に関して、近年各オミックス解析技術の進化や高度化が著しく、最先端技術の積極的な活用に加え、参画するアカデミアおよび製薬企業の英知を結集させることにより、より効果的な解析を行うことで疾患別情報統合DBの構築を実現させます。

構築した疾患別情報統合DBを活用することで、アカデミアにおいては得られた知見を臨床現場に戻し、診断精度の向上や効果的な治療を実現させ、製薬企業においては革新的な新薬創出に繋げることが本産学官共同研究の目標となります。

本プロジェクトは、製薬協 政策提言2019※2において、製薬産業が推進すべき施策の1つとして示した「予防・先制医療の実現」に端を発し、賛同した製薬協会員企業7社、およびNCBNとの間で達成すべき目標が共有され、課題解決に向けた具体的な検討を進めていたものです。

取り組みの概要は以下の通りです(図参照)。共同研究の最終目標は予防・先制医療を実現することですが、そのためには、多くの課題を段階的に解決していく必要があります。本課題における複数のアカデミアおよび企業が参画する「多」対「多」の協業はその最初のステップ(Step-1)であり、疾患別情報統合DBの構築と深い疾患理解を通して、アカデミアからは新たな疾患分類や早期診断方法の提案、産業界からは層別化された患者層に対する標的分子やバイオマーカーの同定といったアウトプットを目指します。

具体的には、NCBNの質の高いバイオバンク試料、および精緻な診療を介した前向き取得試料に対し、高度な測定手法を用いて多層的オミックスデータを取得し、オミックスデータと医療情報を紐付けることで疾患別情報統合DBを非競争的に構築します。その後、各機関は注目する疾患や興味深い分子に着目して独自に最先端の解析を行うことで競争的にそれぞれのアウトプットの実現を進めます。

また、本共同研究の中では、非競争的にデータ解析を行うことを通じて、データサイエンスや生物統計学、臨床薬理学、レギュラトリーサイエンスといった予防・先制医療の実現に欠かすことのできない知識を有する専門家の育成も図ります。

このStep-1を経て、Step-2、Step-3へと発展させていく中で、アカデミアのもつ基礎および臨床に関する研究基盤に製薬企業の応用・実用化研究力を加え、さらには最先端の試料解析手法やビッグデータ解析、AIといった異分野の手法も融合させ、革新的医薬品の継続的な創出とともに、プレシジョンメディスンや予防・先制医療といった未来医療の実現の達成を目指します。

NCBNと日本製薬工業協会加盟企業が疾患別情報統合データベースの構築・活用に係る産学官連携を開始

                                                    図:予防・先制医療ソリューション構想における疾患情報統合データベースの位置付け

研究支援、実施体制概要

  • 事業名
    AMED「創薬基盤推進研究事業」産学官共同臨床情報利活用創薬プロジェクト(GAPFREE)
  • 研究開発課題名
    『ナショナルセンター・バイオバンクネットワークを基盤とする疾患別情報統合データベースを活用した産学官連携による創薬開発研究』
  • 研究開発代表者
    国立国際医療研究センター バイオバンクアドバイザー 後藤 雄一
  • 参画機関
    ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN) および
    国立国際医療研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センター、国立循環器病研究センター
    製薬協加盟企業(7社)
    旭化成ファーマ株式会社、アステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、小野薬品工業株式会社、田辺三菱製薬株式会社、第一三共株式会社、日本新薬株式会社
  • 研究開発予定期間
    2020年(令和2年)12月~2025年(令和7年)3月

用語解説

※1:オミックス解析:ゲノム解析(遺伝情報の網羅的解析)、トランスクリプトーム解析(mRNAの網羅的解析)、プロテオーム解析(タンパク質の網羅的解析)、メタボローム解析(代謝物の網羅的解析)などを総称する言葉。
※2:製薬協 政策提言2019は、製薬協が2019年1月24日に発表した政策提言であり、「イノベーションの追求と社会課題の解決に向けて-」を副題とし、『製薬協 産業ビジョン2025』の実現に向け、製薬業界に求められるもの、社会に対して発信していくべきことを整理したもの。
URL: http://www.jpma.or.jp/event_media/release/pdf/20190124_1_1.pdf

本件に関するお問い合わせ先

《取材に関するお問い合わせ先》

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
広報企画室 広報係長
担当:西澤 樹生(にしざわ たつき)
電話:03-3202-7181(平日:9:00~17:00)
E-mail:press@hosp.ncgm.go.jp

《研究に関するお問い合わせ先》
ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)
事務局
電話:03-5273-6891
Eメール:enoiri@hosp.ncgm.go.jp

日本製薬工業協会
広報部
電話:03-3241-0374