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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についてNCGMが発表した学術論文
NCGMはCOVID-19対応にあたるほか、学術論文を発表することによって、COVID-19対応を通じて得た経験や研究成果を、人類共有の財産として蓄積・継承してまいります。このページでは、NCGM職員が筆頭著者または責任著者である掲載済み論文について紹介しています(editorialを除く)。
2021年1月20日現在、64報を掲載しています。
▼2021年1月掲載
COVID-19肺炎の回復期にも血痰やブラ形成が起こりうる<NEW>
COVID-19の主な症状は発熱や咳嗽であり、両側の胸膜直下に広がるすりガラス影が一般的な胸部CT所見として報告されている。本論文では発熱や咳などの症状が改善したCOVID-19肺炎の回復期に血痰が生じ、CT検査で新たなブラ形成を指摘された症例を報告した。臨床経過や検査所見から急性期に生じた肺胞障害が血痰やブラ形成の原因である可能性が高いと考えた。肺胞障害の回復期にも血痰やブラを原因とした気胸などの合併症がおこる可能性があるため、肺胞障害を示唆する所見があった症例については、症状改善後も経過観察が必要である。
Sato L, Kinoshita N, Nakamoto T, Ohmagari N.
Hemoptysis and a Newly Formed Lung Bulla in a Case of Convalescent COVID-19 Pneumonia.
Intern Med. 2021.
https://doi.org/10.2169/internalmedicine.5684-20
(2021/1/15)
▼2020年12月掲載
COVID-19に対する迅速抗原検査の有用性:感染性についての予測因子<NEW>
迅速抗原検査は安価で、必要なリソースが少ない検査であるが、検討数がそれほど多くなく、感度についての議論が残っている。また病早期には感度が高いが、その特性を利用して感染性の予測因子として用いることができないかを検討した。RT-qPCRの結果を対照として、迅速抗原検査は病早期ならば比較的高い一致率(κ 0.5)をもち、特にコピー数が高い検体(1000コピー/アッセイ感染研法)であればかなり一致率が高かった(κ>0.8)。結果が乖離しやすい状況は発熱がないか、ウイルス増殖をおさえ得る薬剤の使用に関わっていた。迅速抗原陰性の結果は、多変量解析の結果、平熱、病日が11日以降、つまり隔離解除可能な状況に対する予測因子となる可能性があった。
Yamamoto K, Suzuki M, Yamada G, Sudo T, Nomoto H, Kinoshita N, Nakamura K, Tsujimoto Y, Kusaba Y, Morita C, Moriya A, Maeda K, Yagi S, Kimura M, Ohmagari N.
Utility of the antigen test for coronavirus disease 2019: Factors influencing the prediction of the possibility of disease transmission.
International Journal of Infectious Diseases 2020.
https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.12.079
(2020/12/26)
中国・武漢在住邦人のチャーター便による避難がもたらしたCOVID-19流行の予防効果:数理モデル研究<NEW>
日本政府はCOVID-19の流行を受け2020年1月末に武漢市へチャーター便を派遣、邦人566名が帰国した。感染症流行対策としての避難は日本では前例がなく、その効果に関しては議論がなされていないためその効果を算出した。一般的なSIRモデルに報告の遅れや行動変化、無症状者等を追加し流行を記述するモデルを構築し、湖北省と武漢市における感染者数から感染率、報告割合のパラメータを推定した。チャーター便による避難が行われなかった場合、武漢在住邦人の累積患者数は2020年2月8日の時点で25(95%信頼区間20-29)人、2月15日の時点で34(28-40)人に達し、避難が一週間遅れた場合は14人、二週間遅れた場合は23人の患者数増加に繋がると推定された。
Asai Y, Tsuzuki S, Kutsuna S, Hayakawa K, Ohmagari N.
Effect of evacuation of Japanese residents from Wuhan, China, on preventing transmission of novel coronavirus infection: A modelling study.
J Infect Chemother. 2020.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.12.011
(2020/12/16)
COVID-19肺炎へのポリミキシンB固定化繊維カラムを用いた直接血液灌流(PMX-DHP)<NEW>
PMXは、グラム陰性菌感染症に伴う敗血症病態の改善を図る医療機器として認可されている。一方で間質性肺炎の急性増悪に対する肺酸素化能の改善効果も知られている。PMXではエンドトキシン除去以外に、サイトカインストームに関与する炎症性メディエーターのほか、肺組織を直接的に傷害する活性化白血球などの細胞成分の吸着除去も報告されている。そのため、COVID-19肺炎患者に対しても、PMXの炎症低減効果が病態改善に働く可能性が考えられる。今回、我々はいわゆる新型コロナ第1波と言われた時期に、酸素需要のあった12症例に対してPMXを施行した。特徴的な回路凝固の経験や、サイトカインの動態を含めて報告した。
Katagiri D, Ishikane M, Asai Y, Izumi S, Takasaki J, Katsuoka H, Kondo I, Ide S, Nakamura K, Nakamoto T, Nomoto H, Akiyama Y, Miyazato Y, Suzuki T, Kinoshita N, Ogawa T, Togano T, Suzuki M, Hashimoto M, Sakamoto K, Kusaba Y, Katsuno T, Fukaya T, Hojo M, Sugiyama M, Mizokami M, Okamoto T, Kimura A, Noiri E, Ohmagari N, Hinoshita F, Sugiyama H.
Direct hemoperfusion using a polymyxin B-immobilized polystyrene column for COVID-19.
J Clin Apher. 2020.
https://doi.org/10.1002/jca.21861
(2020/12/15)
入院中のCOVID-19患者に対するフローチャートを用いた眼科コンサルト
COVID-19患者における眼合併症の多くは基本的に視力低下を生じないが、入院患者では診断治療の遅れから重篤な視力低下をきたす眼症状を合併する可能性がある。自然治癒が見込まれる結膜炎や神経内科にコンサルトすべき複視から、重篤な視力低下につながる可能性がある角膜疾患や眼圧上昇など多彩な眼疾患に対し、眼症状やリスクを中心に眼科医にコンサルトすべきタイミングをフローチャートにまとめた。眼科医の常駐しない施設において、またCOVID-19の第三波、第四波、あるいは来たる未知の感染症に対するパンデミックの際にも、このフローチャートは有用と思われる。
Yashiro S, Ueta T, Kutsuna S, Okamoto T, Nagahara M, Ohmagari N.
Using flowchart for ophthalmic consultations in hospitalized patients with COVID-19.
Global Health & Medicine. 2020.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01091
(2020/12/14)
▼2020年11月掲載
COVID-19パンデミックにおける“ステイホーム”の課題:居住に関する脆弱性を持つ9つの人口集団の検討
居住に関する脆弱性を持つ様々な人口集団におけるCOVID-19の社会経済的影響、感染と重症化リスク、対応策ならびに課題を概観する枠組みを作成し、わが国の9つの人口集団に適用して検討を行った。居住の脆弱性を捉える視点として国際的なホームレスの定義を援用し、路上生活者などの住居を持たない人々、インターネットカフェや無料低額宿泊所など暫定的な住居に起居する人々、及び困窮する非正規労働者・LGBTQ・外国人など不安定な居住状況に陥りやすい人々の3つのカテゴリーに分けて分析した。各人口集団特有の課題と共通する課題を整理することをとおして、分野・セクターを超えて対応する必要性を提示した。
Fujita M, Matsuoka S, Kiyohara H, Kumakura Y, Takeda Y, Goishi N, Tarui M, Inaba M, Nagai M, Hachiya M, Fujita N.
“Staying at home” to tackle COVID-19 pandemic: Rhetoric or Reality? Cross-cutting analysis of nine population groups vulnerable to homelessness in Japan.
Trop Med Health. 2020; 48(1):92.
https://doi.org/10.1186/s41182-020-00281-0
(2020/11/23)
プロトコル論文:無症状~軽症COVID-19患者に対するシクレソニド吸入剤の有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相試験
今回我々は、COVID-19に対する治療薬候補の1つである吸入シクレソニドの有効性及び安全性を検討するために、多施設共同非盲検ランダム化第Ⅱ相試験を行った。日本国内の22の病院から、胸部単純写真で肺炎がないCOVID-19患者を90名登録し、シクレソニド400μgを1日3回、7日間にわたって吸入するシクレソニド投与群と、対症療法のみを行う対症療法群のいずれかに無作為に割り付けた。両群とも必要に応じて鎮咳剤および解熱剤等を投与する対症療法は行った。主要評価項目は投与8日後の肺炎増悪割合の差であり、独立した放射線科医がブラインド下で投与前と投与1週間後のCT画像を比較して評価した。解析はFisherの正確検定を行って評価し、有意水準は両側10%とした。
Terada-Hirashima J, Suzuki M, Uemura Y, Hojo M, Mikami A, Sugiura W, Ohmagari N, Sugiyama H.
The RACCO Trial to Assess the Efficacy and Safety of Inhaled Ciclesonide for Asymptomatic and Mild Patients with Covid-19: A Study Protocol for a Multi-center, Open-labeled, Randomized Controlled Trial.
JMIR Res Protoc. 2020.
https://doi.org/10.2196/23830
(2020/11/18)
COVID-19流行初期における感染症外来での電話相談
2019年12月、中国武漢でCOVID-19が確認された翌月に国内初の症例が報告されると、感染症外来への電話での問い合わせが増加した。国内におけるCOVID-19流行初期には、社会の混乱や情勢を反映し感染症外来への電話相談が急増した。第1波では東京都の陽性者数と電話相談数が連動する傾向にあった。これらの相談に対し、国際感染症センター、国際診療部をはじめとする院内各部署、および地域の連携医に協力を仰ぎ即座に対応を行った。第2波では、病院内や地域に適切な医療体制が整備されていたため、電話相談の増加はなかった。新興感染症発症の初期段階では、関連情報を迅速に集約し、状況に応じた対策につなげる必要がある。
Osanai Y, Kinoshita N, Hayakawa K, Tanaka K, Hamano T, Kutsuna S, Ujiie M, Morioka S, Yamamoto K, Isikane M, Saito Sho, Sugiura Y, Ohmagari.
Telephone consults at the Infectious Disease Outpatient Clinic during the early period of the COVID-19 epidemic.
Global Health & Medicine. 2020.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01085
(2020/11/16)
帰国後のCOVID-19に対する自主検疫により透析が中断され問題となった症例
米国で維持透析を受けていた47歳の透析患者が、ルールに則って自主検疫を行い、帰国後7日間透析を受けずにホテルに滞在していた結果、呼吸困難と全身倦怠に陥り、当院に入院して緊急透析を実施することとなった。このケースは、コロナ禍における維持透析患者の国境を越えた移動について、患者の安全と生命を守る為、社会的かつ医学的な制度整備が必要と考えられたので社会への警鐘を鳴らす目的で報告した。
Arai Y, Katagiri D, Hinoshita F.
A case of dialysis interruption caused by voluntary quarantine against the coronavirus disease (COVID-19) after returning from overseas to Japan.
Ther Apher Dial. 2020.
https://doi.org/10.1111/1744-9987.13608
(2020/11/15)
胸部単純CTによる肺動脈-大動脈径比とCOVID-19の臨床重症度との関連
COVID-19では、肺血管内皮障害や肺血栓塞栓症などによる肺高血圧と重症化の関連が報告されているが、感染リスクから心エコーや侵襲性から心臓カテーテルによる肺高血圧症の確定診断は難しい。本研究ではCOVID-19の確定診断で入院時に胸部単純CT検査を施行した103名において、肺動脈-大動脈径比(PA/Ao ratio)が予後と有意に関連し、> 0.9の場合、重症化(酸素需要4L/分以上、挿管管理、人工心肺装置や死亡)を予測できる事を示した。肺炎精査で施行されることが多い胸部単純CTで簡便にCOVID-19の予後を予測でき、日常臨床で極めて有用な指標であると考える。
Hayama H, Ishikane M, Sato R, Kanda K, Kinoshita N, Izumi S, Ohmagari N, Hiroi Y.
Association of plain computed tomography-determined pulmonary artery-to-aorta ratio with clinical severity of coronavirus disease 2019.
Pulmonary Circulation. November 2020.
https://doi.org/10.1177/2045894020969492
(2020/11/5)
発熱外来を受診した非COVID-19患者の中に占める重症患者の内訳
2020年3月11日から4月24日に国立国際医療研究センター病院の発熱外来を受診した1,470人のうち、84人(5.7%)が入院した。84人中45人(53.6%)がCOVID-19患者であった。非COVID-19入院患者39人のうち、9人が生命を脅かす重大な疾患であった。その内訳は、急性心不全(3人)、敗血症性ショック(2人)、HIV/AIDSに伴うニューモシスチス肺炎(2名)、扁桃周囲膿瘍(1人)、壊死性筋膜炎(1人)であった。COVID-19をスクリーニングする外来であっても、COVID-19以外の重大な疾患が隠れていることがあるので注意深く診療する必要がある。
Akiyama Y, Morioka S, Wakimoto Y, Kawashima A, Kanda K, Okuhama A, Suzuki T, Miyazato Y, Nomoto H, Ide S, Nakamoto T, Nakamura K, Ota M, Moriyama Y, Takaya S, Yamada K, Taguchi M, Sugito E, Izuka S, Ishiguro K, Kobayashi T, Miyake W, Kubota S, Ishikane M, Kinoshita N, Yamamoto K, Ujiie M, Kutsuna S, Hayakawa K, Saito S, Ohmagari N.
Non-COVID-19 Patients with Life-threatening Diseases Who Visited a Fever Clinic: A Single-Center, Observational Study in Tokyo, Japan
Intern Med. 2020.
https://doi.org/10.2169/internalmedicine.5614-20
(2020/11/2)
日本国内におけるCOVID-19第一波と第二波の比較
COVID-19 Registry Japanのデータを用いて、日本国内におけるCOVID-19の流行状況を第一波(2020年1月26日~5月31日)、第二波(6月1日~7月31日)として比較した。第一波においては入院時に重症であった症例が多く、発症から入院までの日数が長い傾向にあった。第二波においては若年者の割合が高く、基礎疾患を有する割合が低かった。さらにすべての年齢層において死亡率が低い傾向にあった。これらの結果から第一波においては医療体制がよりひっ迫した状態であったことが示唆された。
Saito S, Asai Y, Matsunaga N, Hayakawa K, Terada M, Ohtsu H, Tsuzuki S, Ohmagari N.
First and second COVID-19 waves in Japan: A comparison of disease severity and characteristics.
J Infect. 2020
https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.10.033
(2020/11/2)
COVID-19回復期に出現した、川崎病などに特徴的な爪所見(Beau's nail、leukonychia)
COVID-19は小児の重篤な病態として、川崎病に類似した小児多系統炎症症候群pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS)が報告されているが、成人でも関連性が注目されている。Beau's nailやleuknychiaは川崎病との関連が指摘されており、今回COVID-19のため酸素やステロイド投与などを受けた日本人成人男性が発症約2ヶ月後にそれらの爪所見を呈したため報告した。COVID-19における病態把握のためには爪所見も重要である。
Ide S, Morioka S, Inada M, Ohmagari N.
Beau’s lines and leukonychia in a patient with coronavirus disease.
Intern Med Advance Publication. 2020.
https://doi.org/10.2169/internalmedicine.6112-20
(2020/11/2)
▼2020年10月掲載
COVID-19回復後に遷延する症状と遅発性合併症
COVID-19で当院 国際感染症センターに入院し2020年2月~6月に退院した78名を対象として、COVID-19回復後に遷延する症状と遅発性合併症に関する電話インタビュー調査を行い、63名より回答を得た。COVID-19急性期症状である呼吸困難、倦怠感、咳嗽、嗅覚障害が発症から120日経過しても残存することがわかった。具体的には、呼吸困難(7名 11.1%)、倦怠感(6名 9.5%)、嗅覚障害(6名 9.7%)、咳嗽(4名 6.3%)であった。加えて、COVID-19から回復した症例の24.1%に脱毛を認めた。脱毛は発症から約2か月間経過してから発症し、約2か月半続くことがわかった。今後、どのような症例に症状が出現・遷延しやすいのか、脱毛などの遅発性合併症が起こりやすいのかに関する検討が必要である。
Miyazato Y, Morioka S, Tsuzuki S, Akashi M, Osanai Y, Tanaka K, Terada M, Suzuki M, Kutsuna S, Saito S, Hayakawa K, Ohmagari N.
Prolonged and late-onset symptoms of coronavirus disease 2019.
Open Forum Infectious Diseases. 2020.
https://doi.org/10.1093/ofid/ofaa507
(2020/10/21)
川崎病様の膜様落屑を回復期に認めた成人重症COVID-19症例
COVID-19は小児の重篤な病態として、川崎病に類似した小児多系統炎症症候群(MIS-C; Multisystem Inflammatory Sndrome in Children)が報告されている。MIS-Cは川崎病のように回復期に膜様落屑を認めたり一部後遺症として冠動脈病変を呈する。最近では成人でも同様の病態(MIS-A; Multisystem Inflammatory Sndrome in Adult)が報告されている。治療にECMOまで要した重症COVID-19患者で回復期に川崎病に類似した膜様落屑を手足の指先端に認めた症例を経験した。欧米からは成人のCOVID-19重症例でMIS-Aの報告もあり、これらではMIS-Cのように冠動脈病変に注意する必要がある。
Nakamoto T, Ishikane M, Sasaki R, Ohmagari N.
Periungual desquamation in a Japanese Adult recovering from severe COVID-19.
Int J Infect Dis. 2020.
https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.10.029
(2020/10/17)
重症度別のCOVID-19患者病室の環境表面と空気汚染
重症度別にCOVID-19患者病室の環境表面および空気汚染を調査し、SARS-CoV-2による環境汚染は重症度に伴って増加しないことが明らかになった。SARS-CoV-2が検出されたのは、2人の重症患者が共有する聴診器の表面、人工呼吸器の挿管チューブ、そのケアをしている看護師のガウンのみであった。これらの結果から、COVID-19患者の周囲の環境や医療機器に汚染が発生する可能性があることから、環境や医療機器の適切な清掃、PPEの適切な着脱が必要であることが示唆された。本研究ではSARS-CoV-2による空気汚染は確認されなかったが、陰圧環境が影響していた可能性があり、さらなる研究が必要である。
Nakamura K, Morioka S, Kutsuna S, Iida S, Suzuki T, Kinoshita N, Suzuki T, Sugiki Y, Okuhama A, Kanda K, Wakimoto Y, Ujiie M, Yamamoto K, Ishikane M, Moriyama Y, Ota M, Nakamoto T, Ide S, Nomoto H, Akiyama Y, Miyazato Y, Hayakawa K, Saito S, Ohmagari N.
Environmental surface and air contamination in severeacute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) patient rooms by disease severity.
Infection Prevention in Practice. 2020;2(4):100098.
https://doi.org/10.1016/j.infpip.2020.100098
(2020/10/13)
東京の『夜の街』におけるCOVID-19:2020年3-4月
2020年3月9日から4月26日にNCGMの発熱相談外来および感染症外来でSARS-CoV-2のPCR検査を受けた者を対象に、疫学および臨床情報を解析した。COVID-19の夜の街クラスターの特徴を記述し、夜の街への曝露とPCR検査結果の関連を検討することを目的とした。1,517人が研究に含まれ、196人(12.9%)が夜の街群に分類された。傾向スコアマッチングを行った結果、PCR陽性率は夜の街群で63.8%、非夜の街群で23.0%と、夜の街群で有意に高かった。同産業におけるCOVID-19の感染リスクを軽減する対策が必要である。
Takaya S, Tsuzuki S, Hayakawa K, Kawashima A, Okuhama A, Kanda K, Suzuki T, Akiyama Y, Miyazato Y, Ide S, Nakamura K, Nomoto H, Nakamoto T, Hikida S, Tanuma J, Ohara K, Ito T, Baba T, Yamamoto K, Ujiie M, Saito S, Morioka S, Ishikane M, Kinoshita N, Kutsuna S, Ohmagari N.
Nightlife clusters of coronavirus disease in Tokyo between March and April 2020.
Epidemiol Infect. 2020;148:e250.
https://doi.org/10.1017/S0950268820002496
(2020/10/13)
▼2020年9月掲載
上海の小中学生におけるCOVID-19流行に伴う学校閉鎖中の抑うつ症状
中国上海の小中学生2,427例を対象に、COVID-19流行による学校閉鎖が行われる直前と閉鎖1~2ヵ月間後に抑うつ症状を調査した。予想に反し、抑うつ症状がある割合は学校閉鎖中にむしろ減っていた。学校閉鎖に伴う生活上の変化として、「家に居られる」「親と一緒に居られる」「自分のやりたいことができる」ことに調査に参加した小中学生の7割以上が満足していた。上海の小中学校において、Covid-19流行に伴う学校閉鎖後の心の健康状態の悪化は認められなかった。学校閉鎖の長期的な影響についてさらなる研究が必要である。
Xiang M, Yamamoto S, Mizoue T.
Depressive symptoms in students during school closure due to COVID-19 in Shanghai.
Psychiatry Clin Neurosci. 2020.
https://doi.org/10.1111/pcn.13161
(2020/9/30)
日本におけるCOVID-19入院患者の臨床疫学的特徴:COVID-19 REGISTRY JAPAN初報
COVID-19 REGISTRY JAPAN(COVI-REGI)は、国立国際医療研究センターが中心となって立ち上げたCOVID-19の症例データベースである。227の医療施設から登録された2638例を検討の対象とした。年齢中央値は56歳(四分位範囲[IQR]:40~71歳)で、症例の半数以上が男性であった。症例の60%近くがCOVID-19確定例または疑い例と濃厚接触歴があった。併存疾患は高血圧(15%)と合併症を伴わない糖尿病(14.2%)が最も多かった。入院中経過は、酸素非投与患者(61.6%)が最多で、次いで酸素投与患者(29.9%)、侵襲的機械的換気またはECMOを使用した患者(8.5%)であった。66.9%の患者が自宅退院し、7.5%が入院中に死亡した。欧米諸国の報告と比し、併存疾患が少なく、死亡率が低い傾向にあることがわかった。
Matsunaga N, Hayakawa K, Terada M, Ohtsu H, Asai Y, Tsuzuki S, Suzuki S, Toyoda A, Suzuki K, Endo M, Fujii N, Suzuki M, Saito Sho, Uemura Y, Shibata T, Kondo M, Izumi K, Terada-Hirashima J, Mikami A, Sugiura W, Ohmagari N.
Clinical epidemiology of hospitalized patients with COVID-19 in Japan: Report of the COVID-19 REGISTRY JAPAN.
Clinical Infectious Diseases. 2020. ciaa1470.
https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1470
(2020/9/28)
軽症・中等症・重症のCOVID-19患者の抗体価の推移
本研究では、重症度の異なる81人のCOVID-19患者(軽症者46人、中等症者19人、重傷者16人)の血液を経時的に収集し、新型コロナウイルスのスパイク蛋白の抗体を測定し推移を解析した。その結果、軽症者や中等症者と比べると、重症者は抗体価が高い傾向があることを示した一方、中等症者や重傷者も発症から60日以降は減衰する傾向があることも示した。 これらの結果は、無症候性感染者や軽症者だけでなく、中等症・重症患者も長期的には抗体価が低下していくことを示唆している。また、この研究結果から、回復者の血漿を採取すべき適切なタイミング、血漿採取に適した患者が明らかとなり、回復者血漿の臨床研究がより効率的に行われることが期待される。
Kutsuna S, Asai Y, Matsunaga A.
Loss of Anti-SARS-CoV-2 Antibodies in Mild Covid-19.
N Engl J Med. 2020;383(17):1695-1696.
https://doi.org/10.1056/NEJMc2027051
(2020/9/23)
COVID-19後の公衆衛生対応の強化に向けて 米国 CDC の概説と日本版 CDC 構想への論点整理
COVID-19の拡大を受け、日本版CDC等の創設について議論されているが、米国CDCの広範なミッションや機能に基づいた議論には至っていない。本稿では、収集した情報をもとに米国CDCについて概説し、日本版CDCを構想する上で検討するべき論点を整理した。米国CDCは「健康、安全、セキュリティの脅威から米国を守る」ことをミッションとし、実地疫学、緊急準備と対応、サーベイランス、検査・調査法の開発、情報発信、人材育成、検疫、予算配分などを業務としている。日本版CDCを構想する際には、対象疾患や課題のスコープ、組織体制、ミッション、科学的中立性の担保、人材育成のあり方などについて議論する必要がある。
杉山 雄大, 今井健二郎, 東 尚弘, 冨尾 淳, 田宮菜奈子
COVID-19後の公衆衛生対応の強化に向けて:米国 CDC の概説と日本版 CDC 構想への論点整理
日本公衛誌. 2020. 67(9): 567-572.
https://doi.org/10.11236/jph.20-069
(2020/9/15)
COVID-19患者の重症化を予測する血液検査マーカーの開発
COVID-19では、軽症であったヒトが急激に重症化するという特徴がある。感染初期の軽症時に将来の重症化を予測できれば、重点的な治療が必要な人に注力した対応が可能となり、結果として重症化や死亡を効率よく防ぐことが出来るといえる。今回の研究では、入院患者の血液を使って、重症化前にその兆候を捉えることが出来る血液検査マーカーの探索を実施した。その結果、CCL17、インターフェロンラムダ3、IP-10、IL-6、CXCL9が、その有用な因子であると考えられた。特に、CCL17は、COVID-19が確認された早期から、将来の重症者で低値を取ることがわかり、COVID-19に特徴的な性質であった。今後、複数の施設で協力し、多数患者での検証を進める。
Sugiyama M, Kinoshita N, Ide S, Nomoto H, Nakamoto T, Saito S, Ishikane M, Kutsuna S, Hayakawa K, Hashimoto M, Suzuki M, Izumi S, Hojo M, Tsuchiya K, Gatanaga H, Takasaki J, Usami M, Kano T, Yanai H, Nishida N, Kanto T, Sugiyama H, Ohmagari N, Mizokami M.
Serum CCL17 level becomes a predictive marker to distinguish between mild/moderate and severe/critical disease in patients with COVID-19.
Gene. 2020;766:145145.
https://doi.org/10.1016/j.gene.2020.145145
(2020/9/15)
COVID-19を通じて明らかになったグローバルヘルス研究開発分野の課題
COVID-19の世界的流行は、グローバル化した世界の脆弱性を浮き彫りにした。研究開発(R&D)もその例外ではなく、市場主導のインセンティブが乏しいため感染症分野は無視されてきた。しかし、現在のCOVID-19危機と将来に起こりうる類似の人類に対する脅威に対処するために、新たな取り組みが始まっている。本論文ではグローバルヘルスR&D分野の状況を考察し、主要な感染症(HIV/AIDS、結核、マラリア)を除き感染症に対する資金調達が不足していることを示した。また、COVID-19流行を発端とした取り組みと、開発からアクセスまでを一気通貫した新たな取り組みについて論じた。最後に、市場の失敗に対応したR&Dのために、政府、産業界、国際慈善団体との連携による新たな資金調達モデル(GHITモデル)を紹介し、今後アクセスを高めるための戦略を提示した。
Nakatani H, Katsuno K, Urabe H.
Global health landscape challenges triggered by COVID-19.
Inflamm Regen. 2020;40:34.
https://doi.org/10.1186/s41232-020-00144-5
(2020/9/14)
医療従事者が適切に個人防護具を使用すると、新型コロナウイルスの感染を防ぐことができる
COVID-19の患者に直接対応する医療従事者49名(看護師31名、医師15名、そのほかの職種3名)を対象に前向きコホート研究を行い、2週間毎に血清抗体価を測定した。ELISA法では7名の血清で抗体が陽性と判定されたが、中和抗体法では陰性だったことから、いずれも偽陽性と判断した。この結果から、参加者全員が新型コロナウイルスには感染していなかったことが判明した。この研究により、個人防護具を適切に使用すると医療従事者の新型コロナウイルス感染を防ぐことができると示された。医療従事者が安全に職務を全うできるように、個人防護具が安定供給されるような体制を整備することが必要である。
Suzuki T, Hayakawa K, Ainai A, Iwata-Yoshikawa N, Sano K, Nagata N, Suzuki T, Wakimoto Y, Akiyama Y, Miyazato Y, Nakamura K, Ide S, Nomoto H, Nakamoto T, Ota M, Moriyama Y, Sugiki Y, Saito S, Morioka S, Ishikane M , Kinoshita N, Kutsuna S, Ohmagari N.
Effectiveness of personal protective equipment in preventing severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection among healthcare workers.
J Infect Chemother. 2020.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.09.006
(2020/9/9)
▼2020年8月掲載
ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)を用いてCOVID-19による呼吸不全から回復した症例
ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)の抗炎症作用がCOVID-19に対して有効かどうかは明らかになっていない。今回、我々はPMX-DHPが効果的に作用し機械換気を回避することができた症例を経験したので報告する。症例は83歳男性。10日間持続する発熱があり、COVID-19と診断され入院した。胸部CTでは広範な非区域性のすりガラス影を認めた。ロピナビル/リトナビル内服を開始したが、呼吸不全が進行した。PMX-DHPおよび補助療法としての副腎皮質ステロイドの使用によって呼吸状態が改善した。急速に進行するCOVID-19症例においては、早期のPMX-DHP使用が肺局所の炎症を抑え、機械換気を回避できるかもしれない。
Kusaba Y, Izumi S , Takasaki J, Suzuki M, Katagiri D, Katsuno T, Matsumoto S, Sakamoto K, Hashimoto M, Ohmagari N, Katano H, Suzuki T, Hojo M, Sugiyama H.
Successful Recovery from COVID-19-associated Acute Respiratory Failure with Polymyxin B-immobilized Fiber Column-direct Hemoperfusion.
Internal Medicine. 2020;59(19):2405-2408.
https://doi.org/10.2169/internalmedicine.5413-20
(2020/8/29)
都市間移動及び行動パターンを考慮した確率的状態遷移モデルを用いた東京におけるCOVID-19流行の分析
東京でのCOVID-19の感染広がりが5月下旬に収まり、ロックダウンせずに東京は一時的に感染者増加を落ち着かせることに成功した。しかしながら、緊急事態宣言解除後に経済活動再開に伴って感染拡大の第2波の危険性が存在する。本研究では経済活動が再開される中でグループ別に行動パターンをもたせた確率的状態遷移モデルを用いて、3月から7月末までの感染広がりをシミュレーションした。その結果、6月以降の活動が再開されると、再度感染者が著しく増加することがわかった。また、行動パターンをいくつか変更しテレワーク導入によって感染の危険性が高いエリアに滞在する時間が減るとそれに伴って感染者数の増加が落ち着くことがわかった。
Karako K, Song P, Chen Y, Tang W.
Shifting workstyle to teleworking as a new normal in face of COVID-19: analysis with the model introducing intercity movement and behavioral pattern.
Ann Transl Med. 2020;8(17):1056.
http://dx.doi.org/10.21037/atm-20-5334
(2020/8/24)
GRL-0920はSARS-CoV-2の感染・複製を完全に阻止する
本研究では、SARS-CoVとSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ (Mpro) の高い構造類似性に着目し、SARS-CoVに対する活性が報告されている化合物とその誘導体を合成、SARS-CoV-2に対する活性を評価した。その結果、顕著な細胞毒性無しに、SARS-CoV-2に対して強力な活性を発揮するインドールクロロピリヂニルエステル誘導体、GRL-0920 (EC50 = 2.8 µM) を同定した。ファビピラビル、ロピナビル、ネルフィナビル、ニタゾキサナイド、ナファモスタット、ハイドロキシクロロキンには有意の活性を認めなかった。GRL-0920はCOVID-19に対する治療薬開発のリード化合物として有用な情報を与えると期待される。
Hattori S-i, Higshi-Kuwata N, Raghavaiah J, Das D, Bulut H, Davis D, Takamatsu Y, Matsuda K, Takamune N, Kishimoto N, Okamura T, Misumi S, Yarchoan R, Maeda K, Ghosh A, Mitsuya H.
GRL-0920, an Indole Chloropyridinyl Ester, Completely Blocks SARS-CoV-2 Infection.
mBio. 2020;11:e01833-20.
https://doi.org/10.1128/mBio.01833-20
(2020/8/20)
SARS-CoV-2感染後に一過性の大血管炎を新たに生じた成人男性の一例
我々は、SARS-CoV-2感染後に一過性の大血管炎を新たに生じた成人男性の一例を経験した。SARS-CoV-2感染後、大血管炎の症例報告は世界初である。血管炎、動脈硬化の既往歴のない71歳男性がCOVID-19の診断で入院した。加療後、呼吸器症状は改善したが弛張熱を認めた。熱源精査目的に造影CT、18F-FDG PET/CTを施行したところ、大動脈に大血管炎を示唆する所見を認めた。NSAIDSによる対症療法で自他覚症状は改善し退院した。退院1ヶ月後の外来で施行した画像検査では大動脈における炎症所見は消退していた。血液検査では高安大動脈炎に特異的なHLA-DR4が検出された。本症例より、特定のHLAを保有している個人においてはSAR-CoV-2感染後に自己免疫現象としての血管炎を発症する可能性が示唆された。
Oda R, Inagaki T, Ishikane M, Hotta M, Shimomura A, Sato M, Nakamoto T, Akiyama Y, Yamamoto K, Minamimoto R, Kaneko H, Ohmagari N.
Case of adult large vessel vasculitis after SARSCoV-2 infection.
Ann Rheum Dis. 2020.
http://dx.doi.org/10.1136/annrheumdis-2020-218440
(2020/8/11)
アジア・オセアニア地域の産婦人科学会ウエブサイトでの一般女性向けCOVID-19情報提供状況
本稿では、アジア・オセアニア地域の産婦人科学会サイトにおける一般女性向けCOVID-19情報提供の現状をレビューした。アジア・オセアニア産婦人科連合に加盟する28学会中、アクセス可能だった19学会サイトのうち、9サイトにおいてCOVID-19特設サイトがあったが、これらはすべて学会員対象情報であった。また2サイトにおいて、一般女性むけ特設サイトがあったものの、そこでCOVID-19情報を提供していたのは日本産科婦人科学会のみであった。学会員のみならず一般女性に対しても専門家集団である産婦人科学会からの信頼できるCOVID-19情報の提供が望まれる。
Kikuchi S, Komagata T, Obara H.
Do the Asia and Oceania Federation of Obstetrics and Gynecology members' websites provide information targeting women in the context of the COVID‐19 pandemic?
Journal of Obstetrics and Gynecology. 2020.
https://doi.org/10.1111/jog.14377
(2020/8/7)
CTサーベイランスはCOVID-19のアウトブレイクの追跡に役立つ
COVID-19肺炎は、コンピューター断層撮影(CT)で両肺の末梢側に斑状のスリガラス影の散在といった特徴的所見を示すことが知られている。すなわち胸部CTで臨床診断がある程度可能であり、PCR検査結果が判明する前に、おおまかなトリアージが行える利点がある。このため多くの医療施設においてCOVID-19肺炎疑い患者に対し、初診時にCTを施行されている。我々はこれを利用して、COVID-19感染疑い患者の動向を調査するべく「ウイルス性肺炎画像診断サーベイランス」(以下、CTサーベイランス)を企画し、日本医学放射線学会(JRS)の支援のもと2020年3月より開始した。この解析の結果、政府が発表するPCR陽性患者の日次動向と地域分布に類似性を認め、CTサーベイランスの蓋然性が明らかになった。また日次動向では3月の3連休以降のoutbreakについても同じく観察された。CTサーベイランスの手法は、本COVID-19肺炎の追跡に役立つだけではなく、迅速かつ集約的データ収集のモデルとして応用可能であると思われた。
Machitori A, Noguchi T, Kawata Y, Horioka N, Nishie A, Kakihara D, Ishigami K, Aoki S, Imai Y.
Computed tomography surveillance helps tracking COVID-19 outbreak.
Jpn J Radiol. 2020.
https://doi.org/10.1007/s11604-020-01026-z
(2020/8/7)
SARS-CoV-2 PCRをいつ反復するべきか?:典型的な肺所見があるときに限りPCRを反復すべき
SARS-CoV-2 RT-PCR(以下、PCR検査)は偽陽性を疑うような状況で検査を反復するが、どのような対象に反復するべきか明確ではない。2020年3月9日から4月24日までにPCR検査を1803例に対して行い、364例(20%)がCOVID-19と診断された。45例が診断のためにPCR検査を反復したが、COVID-19と診断されたのは5例のみであった。4例は典型的な肺所見を示していたが、症状持続のため検査を反復した1例も陽性となった。ただし、この1例は偽陽性が強く疑われ、結核性胸膜炎と確定診断された。以上からPCR検査反復は典型的な肺所見を有する症例に絞ったほうが有用と考えられた。
Yamamoto K, Saito S, Hayakawa K, Hashimoto M, Takasaki J, Ohmagari N.
When should clinicians repeat SARS-CoV-2 RT-PCR?: Repeat PCR testing targeting patients with pulmonary CT findings suggestive of COVID-19.
Jpn J Infect Dis. 2020.
https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2020.531
(2020/8/3)
▼2020年7月掲載
尿中バイオマーカーを用いたCOVID-19患者の重症度評価
COVID -19では無症状の患者も多い中、発症から10日程度で急速に悪化し人工呼吸器や人工肺が必要になる患者が存在する。早期段階での重症化予測は、適切な医療機関への搬送や医療リソースの確保の上で重要である。今回、入院患者を対象として入院時の尿中L型脂肪酸結合蛋白 (L-FABP)およびβ2 マイクログロブリン(β2MG)を測定した。発症から10日以内の尿検体を用いて、L-FABPとβ2MGによる重症化予測能をROC解析により評価したところ、AUCが0.844 – 0.918と高い精度で重症化リスクを判別できることが明らかとなった。尿検査は侵襲性が低いため、今後患者数を集積してより研究を進める予定である。
Katagiri D, Ishikane M, Asai Y, Kinoshita N, Ota M, Moriyama Y, Ide S, Nakamura K, Nakamoto T, Nomoto H, Akiyama Y, Miyazato Y, Suzuki T, Okuhama A, Kanda K, Wakimoto Y, Morioka S, Saito S, Yamamoto K, Ujiie M, Hayakawa K, Kustuna S, Yanagawa Y, Terada J, Takasaki J, Izumi S, Hojo M, Hinoshita F, Sugiyama M, Noiri E, Mizokami M, Ohmagari N, Sugiyama H.
Evaluation of Coronavirus Disease 2019 Severity Using Urine Biomarkers.
Crit Care Explor. 2020;2(8):e0170.
https://doi.org/10.1097/CCE.0000000000000170
(2020/7/31)
ケーススタディ:新型コロナウイルスはどのようにして伝播するのか?
COVID-19の63歳男性患者と70歳男性患者がクルーズ船から搬送された。両患者は個室隔離となり、入院時にはSARS-CoV-2 PCR陰性であった妻が付き添った。重症化し挿管管理となった63歳男性患者の妻は入院中にSARS-CoV-2 PCRが陽転化したが、入院中無症状であった70歳男性患者の妻はSARS-CoV-2 PCRは陰性であった。病室の環境調査を行い、新型コロナウイルスの伝播様式を調査した。先行研究と比較し、本研究では環境汚染が軽度であった。本調査結果のみでは明確な感染経路を特定することができず、今後は患者の重症度別の環境調査結果が待たれる。
Morioka S, Nakamura K, Iida S, Kutsuna S, Kinoshita N, Suzuki T, Suzuki T, Yamamoto K, Hayakawa K, Saito S, Ohmagari N.
Possibility of transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 in a tertiary care hospital setting: A case study.
Infection Prevention in Practice. 2020:100079.
https://doi.org/10.1016/j.infpip.2020.100079
(2020/7/30)
血液維持透析COVID-19症例の透析排液からのSARS-CoV-2 RNA検出
血液維持透析患者におけるCOVID-19症例については、世界中から報告があるものの、その透析排液の感染性について調べた報告はなく、透析回路の扱いについても決められた指針はない。我々は、当院で経験した血液透析患者の透析排液から、SARS-CoV-2 RNAを検出した。RNAの検出は感染性を意味するものではないため、感染性の評価については更なる研究が必要であるが、本研究からは、COVID-19血液透析患者の回路の取り扱いについては標準・接触予防策の徹底と個人防護具の適切な使用の重要性が示唆された。その他にも、我々の報告からは、透析患者における炎症反応の遷延の可能性・それに伴うβ2ミクログロブリン吸着カラムの有用性が示唆された。
Okuhama A, Ishikane M, Katagiri D, Kanda K, Nakamoto T, Kinoshita N, Nunose N, Fukaya T, Kondo I, Katano H, Suzuki T, Ohmagari N, Hinoshita F.
Detection of SARS-CoV-2 in hemodialysis effluent of patient with COVID-19 pneumonia, Japan.
Emerg Infect Dis. 2020;26(11):2758-2761.
https://doi.org/10.3201/eid2611.201956
(2020/7/30)
COVID-19患者のFDG-PET/CT画像に関する文献レビューと考察
COVID-19におけるFDG-PET/CT画像に関しては、肺炎像へのFDGの集積を示す報告が大半である。これは糖代謝を表現するFDG(フルオロデオキシグルコース)が炎症細胞に集積する特徴に基づき、FDG-PET/CTが炎症性疾患の診断に有用であるという事実を反映した所見である。我々はCOVID-19既感染者に合併した疾患の診療のために実施したFDG-PET/CT検査の画像からCOVID-19の病態を推測する所見を得たことから、既報との比較および考察を行った。FDGの集積は肺炎像の他、リンパ節、脾臓や骨髄にも認められ、特に免疫系との関連が示唆されるリンパ節における所見は経時的に変化する。そしてこれらの所見が早期に消退することから、COVID-19では全身性の一過性の過剰な免疫反応が生じていることが推測された。
Minamimoto R, Hotta M, Ishikane M, Inagaki T.
FDG-PET/CT images of COVID-19: a comprehensive review.
Global Health & Medicine. 2020.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01056
(2020/7/20)
COVID-19既感染者のPET/CT検査を実施して
COVID-19既感染者のPET/CT検査経験を通じて検討課題があったことから、今後の検査体制について議論を深める目的で報告した。核医学検査室は規定により、出入り口が1箇所であること、検査室滞在時間が長いことに加え、検査種によって待機時間や待機場所も考慮する必要があり、他の検査室とは異なる。PCR 検査の陰性を確認後、通常検査として実施するが、陰性化から比較的短い時間で検査依頼される場合や臨床症状から感染疑いが否定できない場合、緊急性を要するケースなど、感染リスクに遭遇する可能性がある。COVID-19の実態が判明していくにつれ、対応方法は変化していくが、本報告がCOVID-19 に対する安全かつ有効な核医学検査法確立のための一助となることを期待する。
齋藤 郁里, 堀川 大輔, 竹内 智弥, 水沼 文孝, 山田 唯, 弘中 さつき, 梶原 宏則, 堀田 昌利, 松永 太, 南本 亮吾.
COVID-19 既感染者の PET/CT 検査を実施して.
日本放射線技術学会雑誌, 76 巻 (2020) 7 号:761-767.
https://doi.org/10.6009/jjrt.2020_JJRT_76.7.761
(2020/7/20)
SARS-CoV-2感染およびCOVID-19死亡率はACE1 I / D遺伝子型と強く相関している
SARS-CoV-2感染の主な特徴の1つは、特定の地域や民族に対する顕著な影響である。とくにアジアに比較して、欧米などでそのインパクトは大きい。そのため、レニンーアンギオテンシン系遺伝子群に焦点を当てて、とくに欧州人と東アジア人の遺伝素因の差異に関する比較研究を行った。その結果、ACE1 II遺伝子型頻度が増すと、SARS-CoV-2の感染者数と感染による死亡者数が減少するという、強い負の相関があることを見出した。このことから、ACE1 II遺伝子型はCOVID-19の感染率と臨床転帰に影響を与える可能性があることやCOVID-19感染リスクと症状の重症度を予測するマーカーになる可能性があること、さらにACE1とACE2のインバランスを是正する治療法開発の重要性が示唆された。
Yamamoto N, Ariumi Y, Nishida N, Yamamoto R, Bauer G, Gojobori T, Shimotohno K, Mizokami M.
SARS-CoV-2 infections and COVID-19 mortalities strongly correlate with ACE1I/D genotype.
Gene. 2020.
https://doi.org/10.1016/j.gene.2020.144944
(2020/7/3)
家族全員が挿管管理となった、COVID-19による重症家族内クラスター症例
COVID19によるクラスターは世界中で報告されている。今回、我々は基礎疾患の無い若年者を含めた家族3人全員が挿管管理となった重症家族内クラスター症例を報告する。腎移植後の67歳男性がSARS-CoV-2に感染し、重症肺炎のため挿管管理となった。その後、同居していた妻と次男も感染し、重症肺炎のため同様に挿管管理となった。同居していない長男のみ、感染を免れた。家庭内ではsocial distanceの確保が困難であるため、多くのウイルス量に暴露したことが重症化に繋がった可能性がある。医療崩壊を防ぐために、軽症者は自宅待機する場合があるが、家庭内隔離が不十分であれば、家庭内の感染拡大や重症化に繋がる可能性を考慮しなければならない。
Katsuno T, Suzuki M, Ishikane M, Kinoshita N, Tsukada A, Morita C, Kusaba Y, Sakamoto K, Yamaguchi Y, Tsujimoto Y, Hashimoto M, Terada J, Takasaki J, Izumi S, Okuhama A, Ide S, Moriyama Y, Matsuda K, Takamatsu Y, Mitsuya H, Hojo M, Sugiyama H.
A familial cluster of severe coronavirus disease 2019 that required intubation of all family members.
Infectious Diseases. 2020;52(10):755-758.
https://doi.org/10.1080/23744235.2020.1784999
(2020/7/2)
▼2020年6月掲載
日本の海外渡航者におけるPCR検査の実施
COVID-19の流行に伴い、今年4月には日本の海外渡航者数は昨年比で99.8%減少した。その後、海外渡航が一部に国で再開されつつあるが、渡航者に対して事前にSARS-COV-2のPCR検査証明書の提出を義務付ける国も複数認められる。
当院では、事前のPCR検査を義務付けられた海外渡航者に対して、自由診療で検査を行う体制を整備した。検査実施に当たり、2次感染を予防のため、事前の感染リスクを評価・確認し、適切な感染対策下で検査を実施する。また、本人に偽陽性を含めた検査限界等の説明と注意事項の伝達を確実に行う。
経済活動の再開に伴い、このような診療の社会的ニーズは今後も高まることが予想され、適切な検査診療体制の構築が望まれる。
Ujiie M, Ohmagari N, Inoue H.
Testing for COVID-19 at travel clinics in Japan.
J Travel Med. 2020;27(5):taaa107.
https://doi.org/10.1093/jtm/taaa107
(2020/6/27)
COVID-19患者は比較的徐脈を呈し、発熱が7日続く場合に急激な悪化を起こしやすい
当院で診療した、2020年2月までに入院したCOVID患者11名について重症度を4グループに分けて後方視的に検証を行った。その結果、ほぼすべての症例で相対的徐脈を認め、細菌性肺炎と異なる点であることが示された。また、発熱が7日以上持続する患者で突然悪化する傾向が見られた。
Nakamura K, Ide S, Saito S, Kinoshita N, Kutsuna S, Moriyama Y, Suzuki T, Ota M, Nomoto H, Mizoue T, Hojo M, Takasaki J, Asai Y, Terada M, Akiyama Y, Miyazato Y, Nakamoto T, Wakimoto Y, Ujiie M, Yamamoto K, Ishikane M, Morioka S, Hayakawa K, Sugiyama H, Ohmagari N.
COVID-19 can suddenly become severe: a case series from Tokyo, Japan.
Global Health & Medicine. 2020;2(3):174-177.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01054
(2020/6/27)
武漢からチャーター便で帰国した日本人のPCR検査の結果と無症候性感染者の臨床像
2020年1月下旬、中国の武漢市がロックダウンとなり、現地の日本人はチャーター便で帰国した。この際、COVID-19のスクリーニングとしてPCR検査を国立国際医療研究センターで実施した。帰国者566人のうち11人が陽性となり、このうち6人は無症候性感染者であった。また帰国時のPCR検査で陰性であった帰国者のうち2名は後にCOVID-19を発症しており、帰国時のみのPCR検査だけでは見逃しが生じ得ることが示された。
Kutsuna S, Suzuki T, Hayakawa K, Tsuzuki S, Asai Y, Suzuki T, Ide S, Nakamura K, Moriyama Y, Kinoshita N, Hosokawa N, Osawa R, Yamamuro R, Akiyama Y, Miyazato Y, Nomoto H, Nakamoto T, Ota M, Saito S, Ishikane M, Morioka S, Yamamoto K, Ujiie M, Terada M, Nakamura-Uchiyama F, Sahara T, Sano M, Imamura A, Sekiya N, Fukushima K, Kawana A, Fujikura Y, Sano T, Suematsu R, Sakamoto N, Nagata K, Kato T, Katano H, Wakita T, Sugiyama H, Kokudo N, Ohmagari N.
SARS-CoV-2 screening test for Japanese returnees from Wuhan, China, January 2020.
Open Forum Infect Dis. 2020;7(7):ofaa243.
https://doi.org/10.1093/ofid/ofaa243
(2020/6/20)
COVID-19に対する集中治療室での持続血液濾過(CRRT)施行時の注意点
COVID-19患者がひとたび重症化し、多臓器不全の一環として、重度の急性腎障害(AKI)を発症した場合、集中治療室での持続血液濾過透析(CRRT)が考慮される。我々はAKI合併COVID-19症例に対して、サイトカイン吸着膜を用いてCRRTを施行した。CRRT排液は医療スタッフが扱うため、その潜在的な感染リスクを評価する必要がある。我々の検討ではCRRT排液から複数回、SARS-CoV-2 genomic materialが検出された。集中治療室でのCRRT施行時には、医療者の感染管理に注意しながら安全に行う必要がある。
Katagiri D, Ishikane M, Ogawa T, Kinoshita N, Katano H, Suzuki T, Fukaya T, Hinoshita F, Ohmagari N.
Continuous Renal Replacement Therapy for a Patient with Severe COVID-19.
Blood Purif. 2020.
https://doi.org/10.1159/000508062
(2020/6/11)
国内で初となるHIVと新型コロナウイルスとの共感染事例
世界中に感染が拡大しているCOVID-19であるが、HIV感染症患者が新型コロナウイルスに感染するとどうなるのか、重症化しやすいのかも含めてまだ良く分かっていない。また、HIV感染症患者が新型コロナウイルスに感染した事例もまだ世界では報告が少なく、報告の集積が待たれるところである。我々は日本で最初となるHIV感染症患者におけるCOVID-19の事例を報告した。この症例はHIV感染症に対する治療(抗レトロウイルス療法:ART)が行われていないHIV感染による免疫状態のコントロールが不十分であった.HIVウイルス量はCOVID-19の急性期に減少し,回復期に増加したことが観察された。これまでの報告では、未治療のHIV患者では非HIV患者と比較して重症化リスクは高くないことが示唆されているが、ART開始に伴う免疫再構築症候群が起こらないか慎重な経過観察が必要となる。
Nakamoto T, Kutsuna S, Yanagawa Y, Kanda K, Okuhama A, Akiyama Y, Miyazato Y, Ide S, Nakamura K, Yamamoto K, Ohmagari N.
A case of SARS-CoV-2 infection in an untreated HIV patient in Tokyo, Japan.
J Med Virol. 2020.
https://doi.org/10.1002/jmv.26102
(2020/6/3)
中等症から重症のCOVID-19患者における尿の取扱に関する注意喚起
気道検体や便からのSARS-CoV-2 RNAの検出や排泄期間については今までに報告されているが、尿からのウイルス排出に関しては情報が少ない。今回、国立国際医療研究センターに入院した20人のCOVID-19患者の尿中のSARS-CoV-2 RNAの検査を行い、中等症、重症患者、それぞれ1名ずつに、尿中からSARS-CoV-2 RNAを認めた。中等症患者ではSARS-CoV-2 RNAが尿中に1回確認されたのみであったが、重症患者では4日空けて連続して尿中から確認された。中等症以上のCOVID-19患者では、医療従事者は感染管理上、尿の取扱についても注意を払う必要がある。
Nomoto H, Ishikane M, Katagiri D, Kinoshita N, Nagashima M,Sadamasu K, Yoshimura K, Ohmagari N.
Cautious handling of urine from moderate to severe COVID-19 patients.
Am J Infect Control. 2020;48(8):969-971.
https://doi.org/10.1016/j.ajic.2020.05.034
(2020/6/2)
▼2020年5月掲載
重症COVID-19肺炎に対するステロイド療法:適切な投与量と投与期間について
重症COVID-19肺炎の治療は確立されていない。しかし重症化は高炎症状態と関連しており、ステロイド療法が有効な可能性がある。コロナウイルス感染症である中等呼吸器症候群での経験からその有効性に否定的な意見もあるが、COVID-19ではステロイド療法を受けた患者の方が経過良好であったとの報告もみられている。中国や欧米で行われたステロイド療法は短期間・低用量が主であるが、十分なエビデンスは無い。重症COVID-19肺炎は長期間の人工呼吸器管理を強いられることが多く、長期間のステロイド療法の意義を検証する価値があると考えている。COVID-19に対するステロイド療法の文献をもとに、その適切な投与量と投与期間についての私見を述べた。
Matsuda W, Okamoto T, Uemura T, Kobayashi K, Sasaki R, Kimura A.
Corticosteroid therapy for severe COVID-19 pneumonia: optimal dose and duration of administration.
Global Health & Medicine. 2020;2(3):193-196.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01046
(2020/5/30)
入院時の咽頭拭液を使用したPCR検査でSARS-CoV-2 RNAが偽陰性であった症例
(中国武湖北省漢市からの旅行者、2020年1月)
中国湖北省武漢市からの旅行者で、入院時の咽頭拭液を使用したPCR検査でSARS-CoV-2 RNAが陰性であったが、後日の再検査で陽性が判明した症例報告である。本症例は、国立国際医療研究センター病院で初めて診療したCOVID-19確定例であった。臨床的または疫学的(本症例は同じ団体旅行に確定例がおり濃厚接触あり)にCOVID-19が疑われる場合は、真に陰性であることが証明されるまでは、標準、接触、飛沫予防などの適切な感染予防管理措置が必要である。
Ishikane M, Miyazato Y, Kustuna S, Suzuki T, Ide S, Nakamura K, Morioka S, Katano H, Suzuki T, Ohmagari N.
A Case of COVID-19 Patient with False-negative for SARS-CoV-2 of Pharyngeal Swab, from a Chinese traveller Returning from Wuhan, Hubei Province, China, January 2020.
Jpn J Infect Dis. 2020.
https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2020.240
(2020/5/29)
日本における中等症以上のCOVID-19に対する未分画ヘパリンを用いた抗凝固療法の提案
Coronavirus disease 2019 (COVID-19)において凝固亢進により肺塞栓症や深部静脈血栓症を生じる症例が報告され、抗凝固療法により致命率が低下する可能性も示されている。COVID-19に対する抗凝固療法の確立された指針はないため、日本国内で初めて未分画ヘパリンを用いた抗凝固療法のアルゴリズムを作成した。アルゴリズムでは酸素投与量1~4Lの中等症例には未分画ヘパリンの予防投与を行い、酸素投与量5L以上の重症例には治療量で未分画ヘパリン投与を行うことを提案した。国立国際医療研究センターでは本アルゴリズムを用いてCOVID-19 に対して抗凝固療法を行い、気管挿管を回避することができた重症例を経験した。抗凝固療法は少なくともCOVID-19に対する支持療法になる可能性がある。
Sato R, Ishikane M, Kinoshita N, Suzuki T, Nakamoto T, Hayakawa K, Bekki N, Hara H, Ohmagari N.
A new challenge of unfractionated heparin anticoagulation treatment for moderate to severe COVID-19 in Japan.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):190-192.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01044
(2020/5/15)
急激な医療システムの変化:COVID-19対策としてのオンライン診療
活動制限や隔離等のCOVID-19対策が医療サービスへのアクセス阻害につながっているが、それに呼応し中国、イギリス、オーストラリアなどの国でオンラインによる医療専門家よる診察や健康情報を提供できるサービスが立ち上がっている。感染流行に対して公衆衛生上の観点からオンライン医療相談に価値はあるが、医療スタッフ不足やオンライン診療と従来の対面診療の未統合、医療従事者の資格や診断、処方、治療行為の検証、データのセキュリティへの厳格な規制がないといった問題がある。安全性と品質が確保され、対面診療と比較して治療の忠実性が評価されるようになって初めて、オンライン診療が国民の信頼と認知に繋がり、医療サービスの選択肢の一つになる。
Wang H, Song P, Gu Y, Schroeder E, Jin C.
Rapid health systems change: online medical consultations to fight COVID-19.
Ann Transl Med. 2020;8(11):726.
https://dx.doi.org/10.21037/atm-20-2618
(2020/5/13)
発症早期に咽頭の新型コロナウイルスPCR検査の結果が陰性でも、感染対策を解除することは難しい
入院時の咽頭の新型コロナウイルスPCR検査は陰性だったが、後日再検査で陽性が判明した症例の報告である。武漢からのチャーター便で帰国した患者であり、入院時のPCR検査は陰性だったが、症状が続くために感染対策を継続していた。PCR検査は特に発症早期では偽陰性の可能性があるため、PCR検査の結果だけに基づく感染対策解除は注意が必要である。また、地域の中でもPCR検査の結果に頼った感染対策は注意が必要である。たとえば非流行地域では接触歴がある場合に自主的に隔離を促し、流行地域ではPCR検査に頼らず症状があれば自主的に隔離を促すなど、現実的に実施可能な方法を確立する必要がある。
Suzuki T, Kutsuna S, Nakamura K, Ide S, Moriyama Y, Saito S, Morioka S, Ishikane M, Kinoshita N, Hayakawa K, Ohmagari N.
Difficulty of downscaling the precautions for coronavirus disease-19 based on negative throat polymerase chain results in the early phase of infection.
J Infect Chemother. 2020;26(8):851-853.
https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.05.002
(2020/5/8)
▼2020年4月掲載
COVID-19の感染性に対する気温の影響
日本における各都道府県において、3月16日時点での人口1,000,000人あたりの累計患者数と2020年2月の各県の平均気温との関係を評価したところ、低い平均気温とCOVID-19のリスク増加との関連性が示唆された。追加の説明変数として、中国からの渡航者数及び老年人口指数についても評価したところ、同様に累積患者数との関連が示唆された。今後、より広域での関連性や湿度等の別の指標での評価、検討が望まれる。
Ujiie M, Tsuzuki S, Ohmagari N.
Effect of temperature on the infectivity of COVID-19.
Int J Infect Dis. 2020;95:301‐303.
https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.04.068
(2020/4/30)
日本のCOVID-19対応戦略
日本は、COVID-19流行対策として、他国に比較して社会活動の規制が緩やかであったにもかかわらず、感染者・死者が少なく、医療サービスも破綻しなかった。この要因としては、国民の衛生習慣や肥満等のリスク因子の罹患率が低いことに加えて、医療政策も寄与していると考えられる。具体的には、保健所による感染者隔離の徹底と濃厚接触者の調査、政府から市民に対する簡潔・明瞭な行動指針の発信、自治体を調整役とした地域毎のCOVID-19治療病床の確保・調整が挙げられる。
Inoue H.
Japanese strategy to COVID-19: How does it work?
Global Health & Medicine. 2020;2(2):131-132.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01043
(2020/4/30)
COVID-19入院患者における精神的負担と退院後の懸念
2020年1月から3月までに当院に入院したCOVID-19患者を対象とし、入院中の精神的負担と退院後の懸念に関してインタビュー調査を行った。入院中に会社から偏見・差別を受け解雇されたり、疾患の再燃や家族への感染を懸念し自己隔離を継続したりする患者がいた。退院後、COVID-19患者が長期にわたり社会的に孤立する可能性が示唆され、自殺が危惧された。社会がこのことを認識し、今後はメンタルサポートなどの体制整備が必要である。
Morioka S, Saito S, Hayakawa K, Takasaki Jin, Suzuki T, Ide S, Nakamura K, Moriyama Y, Akiyama Y, Miyazato Y, Nomoto H, Nakamoto T, Ota M, Sakamoto K, Katsuno T, Kusaba Y, Ishikane M, Kinoshita N, Ohmagari N.
Psychiatric burdens or stress during hospitalization and concerns after discharge in patients with severe acute respiratory syndrome coronavirus-2 isolated in a tertiary care hospital.
Psychiatry Res. 2020;289:113040.
https://doi.org/10.1016/j.psychres.2020.113040
(2020/4/29)
流行早期における東京都内のCOVID-19患者の特徴と産業保健の役割
東京都のCOVID-19の公表データ(2020年4月27日時点)を分析した結果、3月27日までに報告された成人患者(20歳以上で、学生は除く)は243名であった。最初に発生したクラスター患者10名を除外した233名のうち、162名は男性で、176名は70歳未満の就労世代であった。就業に関するデータが得られた203名のうち、就労していたのは151名で、内訳は会社員114名、自営業31名、医療スタッフ6名であった。感染者の4分の3が就労者であるという結果は、本感染の拡大防止における産業保健の重要な役割を示している。COVID-19制圧のため、社会としてテレワークや時差出勤を推進するとともに、社会生活の維持に必要な仕事に従事する人々(エッセンシャルワーカー)を感染、過労、誹謗中傷や差別から守る多面的な取り組みが求められる。
Kuwahara K, Hori A, Ohmagari N, Mizoue T.
Early cases of COVID-19 in Tokyo and occupational health.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):118-122.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01041
(2020/4/29)
ダイヤモンド・プリンセス号におけるCOVID-19流行の疫学と検疫措置
2020年1月20日~2月22日の間に37.5℃以上の発熱を生じた合計403人の乗船者に対して観察研究を施行した。403人の発熱者のうちCOVID-19確定例は、乗客165人と乗員58人であった。検疫開始時には既に感染は多くのデッキに拡大しており、流行は乗客のデッキから乗員のデッキにも拡大を認めた。確定例数は、2月6日までは3人/日未満で推移したが、2月7日には体温計配布により、新たに43人の確定例が確認され、以後漸減した。全乗客・乗員の下船後14日以上経過した3月17日時点で、乗船者による日本国内でのクラスター発生の報告もなく、今回の検疫措置が前例のない感染症コントロールに貢献した可能性を示唆している。
Tsuboi M, Hachiya M, Noda S, Iso H, Umeda T.
Epidemiology and quarantine measures during COVID-19 outbreak on the cruise ship Diamond Princess docked at Yokohama, Japan in2020: a descriptive analysis.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):102-106.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01037
(2020/4/29)
国立国際医療研究センターにおける湖北省在留邦人の帰国のためのチャーター便対応について
中国でのCOVID-19の拡大に伴い、湖北省の数都市が封鎖され、邦人退避のため日本政府により計5便のチャーター便が派遣された。当センターでは帰国者の大半(793/829人[95.7%])への対応を行い、医師107名、看護師115名、事務110名、検査技師45名、医療通訳数名が参加した。当センターでのトリアージ後の医療機関入院者数は48名であり、空港でのトリアージ人数(n=34)を上回った。トリアージ後入院患者のSARS-CoV-2の陽性率は、トリアージされなかった患者より有意に高かった(4/48人[8.3%]対9/745人[1.2%]:p=0.0057)。
Hayakawa K, Kutsuna S, Kawamata T, Sugiki Y, Nonaka C, Tanaka K, Shoji M, Nagai M, Tezuka S, Shinya K, Saito H, Harada T, Moriya N, Tsuboi M, Norizuki M, Sugiura Y, Osanai Y, Sugiyama M, Okuhama A, Kanda K,Wakimoto Y , Ujiie M, Morioka S, Yamamoto K, Kinoshita N, Ishikane M, Saito S, Moriyama Y, Ota M, Nakamura K, Nakamoto T, Ide S, Nomoto H, Akiyama Y, Suzuki T, Miyazato Y, Gu Y, Matsunaga N, Tsuzuki S, Fujitomo Y, Kusama Y, Shichino H, Kaneshige M, Yamanaka J, Saito M, Hojo M, Hashimoto M, Izumi S, Takasaki J, Suzuki M, Sakamoto K, Hiroi Y, Emoto S, Tokuhara M, Kobayashi T, Tomiyama K, Nakamura F, Ohmagari N, Sugiyama H.
SARS-CoV-2 infection among returnees on charter flights to Japan from Hubei, China: a report from National Center for Global Health and Medicine.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):107-111.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01036
(2020/4/29)
2020年4月2日時点における国内外のCOVID-19治療に関する臨床試験
2020年4月2日時点において、COVID-19治療に関しての臨床試験につき検索を行った。国外でのCOVID-19治療に関してclinicaltrials.govに登録された48件のうち、複数の臨床試験が行われている治療薬はレムデシビル(6件)、ロピナビル/リトナビル(6件)、ヒドロキシクロロキン(6件)、インターフェロン(5件)、メチルプレドニソロン(3件)、一酸化窒素(3件)、オセルタミビル(2件)、アルビドール(2件)、ビタミンC(2件)であった。また、日本国内において実施または計画されている臨床治験(ロピナビル/リトナビル、レムデシビル、ファビピラビル、シクレソニド、ナファモスタット)の概要につき報告を行っている。
Ito K, Ohmagari N, Mikami A, Sugiura W.
Major ongoing clinical trials for COVID-19 treatment and studies currently being conducted or scheduled in Japan.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):96-101.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01034
(2020/4/29)
COVID-19. これまでに明らかになったことと、臨床現場での対応
新型コロナウイルスに関する2020年3月末時点でのウイルス学的特徴、伝播様式、臨床症状、検査、治療薬の進展、感染対策などに関する総説である。
厚生労働省が提示していた「4日間続く発熱」のルールや、日本感染症学会のCOVID-19治療指針など、特に日本の臨床医の立場から記載したものである。
Kutsuna S.
Coronavirus disease 2019 (COVID-19): research progress and clinical practice.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):78-88.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01031
(2020/4/26)
COVID-19パンデミックにおけるNHS(イギリス国民保健サービス)の危機対応:一外科医の経験
第一線の外科医の立場から、今回の危機においてイギリス政府およびNHSがどのように対応したかの報告である。政府の対応は当初緩慢であったが、状況の急速な悪化に伴い方針転換してからは極めて迅速となった。『Stay at home. Protect the NHS. Save lives.』のスローガンの下に、医療(すなわちNHS)崩壊を最小限に抑えるという明確な目的を国民全体が共有し、その実現のために国全体でロックダウンによる大幅な制約・不利益・不便を甘受した。執筆時点でのCOVID-19総死亡数1万人超、一日死亡数700-800人(在院死のみでケアホーム・自宅死含まず)という状況が日々悪化するなか、NHSの最前線の現場でマネジメント・実臨床、様々レベルでどのような対応が取られたかを報告している。
Yano H.
The National Health Service (NHS) response to the COVID-19 pandemic: a colorectal surgeon’s experience in the UK.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):138-139.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01035
(2020/4/24)
COVID-19流行からみるカンボジア国立母子保健センターでの新生児ケアの将来
カンボジアでは2020年2月に初のSARS-CoV-2感染例が確認され、4月9日までにPCR陽性者は119例を数えた。しかし同国での感染者同定には大きな限界があり、病的新生児に対しても潜在的脅威となっている。1992年以来NCGMが協力を継続している国立母子保健センターの新生児室では国家ガイドラインに沿った感染防止対策を遵守している。しかしスタッフが量・質ともに不足しているため、家族1名が室内に24時間滞在して患児に対するケアの多くを担っている点が、我が国の新生児集中医療とは大きく異なる。家族の常時付き添いは深刻な院内感染を引き起こす危険性が高い。感染拡大防止対策のみならず、家族に医療行為を任せざるをえないシステムの再考が急務である。
Iwamoto A, Tung R, Ota T, Hosokawa S, Matsui M.
Challenges to neonatal care in Cambodia amid the COVID-19 pandemic.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):142-144.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01030
(2020/4/23)
COVID-19診断能力確立のための継続的な国際協力の必要性
効果的な感染症対策のための検査診断能力の重要性は近年広く認識されているが、COVID-19のような新たに発見された疾患が発生した際には、その確立に苦慮している国が多い。ミャンマー国でも、COVID-19の診断能力を確立するため、日本やWHOなどが協力して支援を行なった結果、2020年3月23日に初の確定診断が報告され、3月31日時点で15例の陽性例が報告されている。近隣諸国での発生を抑制することなく、特定の国での発生を抑制することは困難であるため、自国の流行対策と並行して、近隣国の診断能力確立のための継続的な国際協力の必要性は極めて高い。
Nozaki I, Miyano S.
The necessity of continuous international cooperation for establishing the coronavirus disease 2019 diagnostic capacity despite the challenges of fighting the outbreak in home countries.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):145-147.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01023
(2020/4/21)
COVID-19パンデミックによる渡航制限期間の国際保健医療協力プロジェクトの実施
外務省ウェブサイトによると2020年4月11日時点で、日本からの渡航者や日本人に対して「入国制限措置をとっている国・地域」は181、「入国後に行動制限措置をとっている国・地域」は69であった。また3月末時点で世界の全ての国に対し「渡航中止勧告」もしくは「不要不急の渡航やはめてください」の注意が海外安全情報として出されている。日本人専門家による低中所得国渡航が不可能な期間に、国際保健医療協力プロジェクトを実施するには、(1)インターネットを活用した会議・研修の活用、(2)それらの国・地域での保健優先課題の状況に応じた技術支援、(3)保健医療従事者の権利・環境を守るためのアドボカシーが重要である。
Obara H, Noda S, Fujita N, Miyoshi C, Akashi H.
Sustainable implementation of international health cooperation projects while Japanese technical experts cannot go to low- and middle-income countries because of the COVID-19 pandemic travel restrictions.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):148-150.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01029
(2020/4/21)
低所得国におけるCOVID-19:西アフリカでのエボラ対応からの教訓
COVID19は、各国における健康の社会的要因や保健システムの積年の課題をあぶりだしている。低所得国では特に、保健医療従事者の質・量両面の不足と偏在が致命的である。エボラ出血熱流行時には、限られた医療資源が同疾患への対応に集中したことで、他疾患の罹患率・死亡率が上昇した。その教訓をCOVID19に反映すべきである。国際支援の際は、「仏語圏アフリカ保健省人材管理ネットワーク」など、保健システムの課題を把握した現地メカニズムとの協力が鍵となる。この支援アプローチは、短期的なCOVID-19流行の制御だけでなく、持続可能で回復力のある保健システム実現に向けた、長期的な課題解決にも貢献する。
Nagai M, Oikawa M, Tamura T, Egami Y, Fujita N.
Can we apply lessons learned from Ebola experience in West Africa for COVID-19 in lower income countries?
Global Health & Medicine. 2020;2(2):140-141.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01028
(2020/4/19)
体外式膜型人工心肺(ECMO)装着下のCOVID-19患者への看護ケア
ECMOを装着したCOVID-19患者への国立国際医療研究センター病院での看護ケアについて報告した。看護師は、N95マスク、撥水性隔離ガウン、キャップ、N95の上にシールドマスク、二重手袋を標準装備とし、エアロゾルが飛散する処置の時のみ、つなぎスーツの着用、電動ファン付き呼吸用防護具を装着した。看護師は、安楽の提供、患者の力を引き出すよう身の回りの世話をする、テクノロジーに対応した管理やモニタリングをすることが役割であるが、COVID-19患者にも同様であった。基本に忠実な感染症対策を行えば、不必要に恐れる必要はなく、基本に忠実な看護を行うことが最良の方法だと今回の経験から学んだ。
Umeda A, Sugiki Y.
Nursing care for patients with COVID-19 on extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) support.
Global Health & Medicine. 2020;2(2):127-130.
https://doi.org/10.35772/ghm.2020.01018
(2020/4/16)
▼2020年3月掲載
確率的状態遷移モデルを用いた日本におけるCOVID-19流行の分析
COVID-19の感染広がりを防ぐため日本政府が2月下旬に提唱したテレワーク及び学校の休校措置による3密状態を避ける政策の効果を検証及び評価するために、感染症数理モデルであるSusceptible-Infected-Removedモデルをベースとして人々が密状態の場所を避ける行動をベースに確率的モデルを構築した。1時間毎にその人が滞在している場所に応じて決まる感染確率をもとにCOVID-19に感染するかが決定される。通常時の密な場所の平均滞在時間を1日あたり8時間とし、政策により平均滞在時間が4時間に減ることで、1日あたりの感染者増加数が一定値に収まり、2時間に減ると流行が収まる結果が得られた。
Karako K, Song P, Chen Y, Tang W.
Analysis of COVID-19 infection spread in Japan based on stochastic transition model.
Biosci Trends. 2020;14(2):134‐138.
https://doi.org/10.5582/bst.2020.01482
(2020/3/19)