平成14年の薬事法改正により、平成15年7月30日から、医師主導治験の実施が可能となった。現在、独立行政法人国立国際医療研究センター(以下、当センター)では、平成17年11月にIRBで審査・承認された医師主導治験が実施中である。その経験をもとに、医師主導治験への取り組みにおける問題点と今後の課題を考察する。
現在、当センター腎臓・循環器科医師が「自ら治験を実施する者(治験責任医師)」となり実施している「持続性心房細動を対象とした塩酸ベプリジル臨床試験((社)日本医師会治験促進センター平成16年度採択課題)」(以下、本医師主導治験)について、その受け入れ準備から実施における問題点を列挙し、それぞれについて検討を加えた。
| 平成17年1月 | (社)日本医師会治験促進センターの平成16年度研究課題として採択決定 | |
| 2月 | 治験実施医療機関募集開始 | |
| 3月 | 当センター腎臓・循環器科が応募 | |
| 4月 | 第1回全体説明会 | |
| 11月 | 当センターのIRB で審議・承認 | |
| 12月 | 全実施医療機関でのIRB 審議・承認が終了 | |
| 平成18年1月 | キックオフミーティング | |
| 1月 | 23日 | 医薬品医療機器総合機構へ治験届を提出 |
| 2月 | 医薬品医療機器総合機構から指摘があり、治験実施計画書、症例報告書、同意説明文書を改訂し、各実施医療機関でIRB 審議・承認 | |
| 3月 | 第1症例目の登録(慶応義塾大学病院) | |
| 4月 | 当センター1例目の登録 |
当センターにおける本医師主導治験の実施においては、以下のような点が問題となった。

◆治験開始前の関連資料作成等を含めた準備にかかる多大な労力と時間
医師主導治験では、実施医療機関としての業務のみならず、通常は治験依頼者が担当する業務もすべて自施設で行うことから、その業務は多岐におよび膨大である。
当センターでは、治験責任医師が治験管理室次長であったため、治験管理室スタッフと綿密な連携をとりながら進めることができた。しかし、そのような環境にあっても、治験開始前の関連資料作成等を含めた準備には、多大な労力と時間を要した。
実施医療機関の負担軽減は、最重要課題である。
◆治験実施施設間における情報の共有化が難しい
14 施設による多施設共同治験であるが、医師主導治験は各施設の判断によりそれぞれ実施することが基本であることから、他施設との横の繋がりが少なく、情報の共有化が難しい。
本医師主導治験については、(社)日本医師会治験促進センターの支援を受けたベプリジル中央事務局の設置とHP の開設、及び研修会の開催等の施策がなされ効果的であったが、治験全体の運営に関しイニシアチブを図るための機関・人材としては十分でなく、更なる支援体制の確立が望まれた。
◆治験実施施設の担当者に対するインセンティブが低い
膨大な業務量にも関わらず、治験責任医師をはじめ実施担当者、特に治験協力者に対するインセンティブが低い。
経済的かつ学問的に、業務量に見合ったより高い評価がなされるべきである。
今後、医師主導治験を円滑に進めるためには、実施医療機関を支援する組織体制の整備が重要と考える。
--- (社)日本医師会治験促進センターなどによる継続的な協力支援体制の確立
--- 各実施医療機関への実施環境整備を含む早期からの支援開始
また、実施医療機関側においても、自施設で果たすべき役割を十分に認識するとともに、日頃の業務を見直し効率化を図るなどの努力も必要である。
--- 治験依頼者による治験を含め、医療機関が果たすべき役割は自立して遂行
本医師主導治験の実施にあたっては、上記のような問題点もあり実務担当者に予想よりも大きな負荷がかかった。しかし、我々医療機関は、患者に必要とされる良き医療を提供することが重要である。
医師主導治験は、臨床現場で必要性が高い分野について実施されるものであり、今後とも推進が求められる。