メタボリックシンドローム情報
生活習慣病一般にいえることですが、例えばあるとき測った空腹時血糖値が「99mg/dl」だったら大丈夫かというとそうとはいえません。追加項目に書かれた値は生理的変動の大きい数値ばかりです。診断基準である以上はあるところで切れ目を入れざるを得ないので、過去の研究に基づいて数値を具体化していますが、例えば健康診断でちょっと血糖値が高いといわれたので2週間ぐらいお酒をぴたっと止めて再検査に臨んだら正常値といわれたなどという経験をお持ちの方が少なくないでしょう。本来であればその人の「平均的な状態」がその基準をみたすということが正しいのでしょうが、なかなか現実的に難しいところです。基準すれすれの方は次の健康診断では危ないかもしれないと思って普段の健康管理をしていただくのが適当です。
また、メタボリックシンドロームは世界各国で診断基準が提案されていますが、多くの疾患には人種差があり、特にウエスト周囲径の基準については各民族固有の値でよいと国際糖尿病学会(IDF)は提案しています(表4)。
| NCEP-ATPIII |
WHO |
IDF |
| ウエスト |
ウエストヒップ比 |
<必須>ウエスト周囲径 |
男性102cm以上
女性88cm以上 |
男性 0.9以上
女性0.85以上 |
民族固有の値でよい |
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中性脂肪 150mg/dl以上 |
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| 中性脂肪 150mg/dl以上 |
またはHDLコレステロール
男性 35 mg/dl未満
女性 40 mg/dl未満 |
中性脂肪 150mg/dl以上 |
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HDLコレステロール
男性 40 mg/dl未満
女性 50 mg/dl未満 |
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HDLコレステロール
男性 40 mg/dl未満
女性 50 mg/dl未満 |
| 空腹時血糖110 mg/dl以上 |
<必須>
糖尿病または
空腹時血糖110 mg/dl以上
または
負荷後2時間血糖140 mg/dl以上
または
インスリン抵抗性の証明 |
空腹時血糖100 mg/dl以上 |
収縮期血圧130 mmHg以上
かつ/または
拡張期血圧 85 mmHg以上 |
収縮期血圧140 mmHg以上
かつ/または 拡張期血圧 90 mmHg以上 |
収縮期血圧130 mmHg以上
かつ/または 拡張期血圧 85 mmHg以上 |
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尿中アルブミン 30 mg/g・Cr以上 |
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| 3項目以上 |
必須項目+その他2項目以上 |
必須項目+その他2項目以上 |
表4 さまざまなメタボリックシンドローム診断基準の提案(代表的なものをとりあげました)
*NCEP-ATPIIIには必須項目はありませんが、WHOでは耐糖能異常(血糖値の異常もしくはインスリン抵抗性)、 IDFは内臓肥満が必須項目になっています。
*WHOの基準では中性脂肪高値またはHDLコレステロール低値の少なくとも一方を満たせば1項目と数えられます が、NCEP-ATPIIIやIDFの基準では、中性脂肪高値とHDLコレステロール低値とは別項目に数えられています。
*NCEP-ATPIII基準で特にアジア人種に対するウエスト基準は男性90cm、女性80cmとなっています(2004年)。 IDF基準においてウエストの民族固有の基準として、中国など他のアジアの国々では男性90cm、女性80cmを採用していることが多いようです。
ではメタボリックシンドロームは医学的に完成された疾患群なのでしょうか。残念ながら、なぜ内臓脂肪が蓄積しすぎるひととそうでないひとがいるのか、あるいは内臓脂肪がそれほど多くないのに糖尿病と高血圧の両方に罹っていてインスリン抵抗性のあるひとがいるのはなぜなのか、といった問題は十分に解決されていません。国際糖尿病学会ではこの点を明確に認めていて、内臓肥満とインスリン抵抗性を「二つの重要な因子」と位置付けています。生活習慣の乱れすなわち食べ過ぎや運動不足で全てが説明されるのか、遺伝的な要因が関係しているのかといった点は今後さらに科学的に解明していかなければならないといえます。
しかしながら、内臓脂肪とは代謝の活発な脂肪組織であり、皮下脂肪と比べて食事療法・運動療法によって「減りやすい」脂肪であると考えられています。そして内臓脂肪が減少することで血圧・血糖値・中性脂肪の値が改善するのも事実です。少なくとも、薬物療法ではなくて生活習慣の改善という、自己管理によって病気を予防することが期待される点で今後の予防医学上きわめて重要であることは間違いありません。
WHOはこの10−20年の間に先進国のみならず発展途上国においても心血管疾患の著しい増加を予測しており、その予防は「待ったなし」の状況となっています。学問的な意味での完成には至っていませんが、まず「実践すること」を優先し船出した疾患概念といえるでしょう。
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