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独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 放射線治療部門 〜小線源治療とは〜 ヨード125は放射性同位元素であり、放射線を周囲に放出する物質です。これを細かい粒に加工し、直径0.5mm、長さ4.4mmの筒型容器に封入したものをヨード125(密封)小線源といい、前立腺がん早期例の治療に用います。 このヨード125小線源を、前立腺内に80個から100個程度挿入することにより、放射線治療を行う治療法です。リニアックなどを用いる外部照射では1回の治療時間は10分程度と短いものの、全部で7週間以上の治療期間が必要とします。 それに対して小線源治療では、たった1回の挿入で全ての治療が終了してしまいます。前立腺の中に挿入された小線源は、永久に前立腺のなかに留置されたままです。その挿入された小線源が徐々に放射線を出し続けて前立腺がんを根治させます。放射線源が前立腺の中に直接存在しますから、放射線は前立腺に限られて投与され、外部照射と比較すると合併症の発生率が少なく、より治療効果の高い点が特徴です。 わが国ではヨード125による放射線治療は開始されたばかりで、その治療成績はまだ報告されていません。しかし米国ではすでに10年以上の歴史をもつ治療法であり、それによれば早期の前立腺がんでは手術(前立腺全摘術)とまったく変わらない成績を示しています。
〜ヨード125の挿入のための準備〜 ヨード125の小線源を前立腺に挿入するには、計画された配置に沿って行わなければなりません。その配置計画は、患者さん個々の、前立腺の大きさや形状により最適化される必要があります。患者さんにそれぞれに応じた、いわばオーダーメイドの小線源配置を考えます。
そのためには事前に放射線治療部に来診して頂き、実際の小線源治療と同様の体位をおとり頂きます。それから尿道が正確に把握できるように、尿道カテーテルを挿入します。さらに肛門から直腸に超音波装置を挿入して、前立腺を観察し記録を行います。腸内に便が残っているとよい超音波画像が得られないので、検査前に排便していただきます。時には浣腸をして頂くことが必要となる場合もあります。
私たち放射線治療医がその超音波画像をコンピュータに保存し、治療計画を行います。前立腺に十分な放射線量が投与され、かつ直腸や尿道などの正常組織に可能な限り放射線量が少なくなるように、ヨード125の挿入配置を計画します。この作業をプレプラン(挿入前計画)と呼びます。 プレプランによって、患者さんに挿入する小線源が合計何本必要かわかりますので、10本程度の予備を含め専門業者に注文します。ヨード125は注文してから原子炉を使用して製造されますので、実際の小線源挿入はプレプランのおよそ3週間後になります。
〜ヨード125の挿入〜 ヨード125小線源を前立腺に挿入するためには、会陰部(睾丸と肛門の間)から針を刺して挿入します。その際には腰椎麻酔や硬膜外麻酔を使用しますので、患者さんは痛みを感じることはありません。小線源は、あらかじめプレプランで計画されたとおりに正確に前立腺内に配置されなければなりません。そのために、X線透視装置や肛門から直腸に挿入した超音波装置で、前立腺と針の先端を確認しながら小線源を挿入していきます。
実際には最初に中空の針を前立腺に刺し、その針の中を通して小線源を挿入していきます。その針を計画された距離(mm単位)だけ引き抜きながら、次々と小線源を挿入していくことにより、多くの小線源を計画どおり決められた位置に配置することが可能となります。また小線源の挿入は、放射線治療棟内にある小線源専用の手術室で行われ、挿入にかかる時間は1時間から2時間程度です。
〜前立腺への小線源挿入後〜 小線源の挿入が終了すると全ての針が抜かれ、会陰部からの出血がないことを確認し、超音波装置を抜いて手術は終了です。膀胱カテーテルは挿入したままです。その後、X線シミュレーションというX線写真を撮影して病室に戻って頂きます。
〜病室に戻られてから〜 患者さんの前立腺内には、ヨード125という放射線を放出する放射性同位元素が入っています。ヨード125は放出する放射線のエネルギーが非常に低いため、そのほとんどは患者さんの体内で吸収されてしまいます。周囲の方との通常の接触は全く問題はありません。ただし患者さんより放出される放射線量が微量であることを確認するために、その放射線量を電離箱サーベイメータという放射線測定器で計測させて頂きます。 その測定後、一般の個室病棟に入院して頂きます。ごく稀に、小線源が尿に混じって排泄される可能性がありますので、膀胱カテーテルから排出される尿は便器に捨てずに取っておきます。それを翌朝、小線源が混じっていないかどうか放射線技師が測定して確認します。
患者さんの入院する部屋は、一時的に「放射線管理区域」として一般人の立ち入りが制限されますので、お見舞いはご遠慮ください。また翌日までは、本人が部屋から外出することもご遠慮ください。
ヨード125小線源はとても小さいので、ごく稀に血管内に混入して肺で捕獲される場合があります。これを肺塞栓といいますが、これによる症状は全くなく、患者さんは何も感じませんのでご安心ください。しかし、肺で捕獲されたヨード125から放出される放射線が肺に障害を起こすことはありませんが将来的に発がんなどを引き起こす可能性は否定できません。以上の理由から小線源による肺塞栓の有無を観察するために、小線源挿入の翌日に胸部と腹部のX線検査をいたします。
さらに、小線源が正確に予定通りに挿入されたかどうかを確認するために前立腺のCT検査をいたします。このCT画像で確認された実際の小線源位置から、放射線がどのように投与されるのかを計算します。これをポストプラン(挿入後計画)といいます。実際の挿入では、前立腺自体の動きや前立腺のむくみなどで必ずしもプレプランの計画通りに小線源の配置が出来ない場合があります。 ポストプランで、計画どおり小線源の配置が出来たかを確認します。もし前立腺の中に、予定と違って挿入されていない部分があれば、日を改めてもう一度、小線源を追加挿入する場合もあります。その反対に尿道や直腸に予定より多めの放射線が照射しまうこともあります。
〜退院してから〜 小線源挿入の翌日には、膀胱カテーテルを抜き去ります。硬膜外麻酔をされた患者さんは、麻酔のチューブを背中から抜き去ります。患者さんの状態にもよりますが、挿入の翌日もしくは翌々日に退院となります。 このときも患者さんからは、微量ではありますが放射線が出ています。通常の接触では周囲の被曝はまったく問題となりませんが、ごく近い距離で長時間接触する家族の方や、長時間の通勤時における混雑した通勤電車など、の場合などは周囲の方々の放射線被曝が問題となることがあります。こういった注意点は、患者さんの生活状況や挿入された小線源の総数などで異なりますので、放射線治療医が事前にお話いたします。場合によっては鉛製の薄い下着を、ある一定期間だけ着用して頂く場合もあるかもしれませんが、担当の放射線治療医とご相談ください。いずれにしてもヨード125は、約60日で放出する放射線量が約半分(半減期といいます)になるので、患者さんから放出される放射線量もその割合で減っていきます。
他の注意点としては、性交時に精液中に小線源が混じって排出されることがありますので必ずコンドームを装着してください。退院後でも、尿中に小線源が出てくることがあります。もしそのとき、小線源の脱落にお気づきになられましたら、小線源には直接触れずに、(小さなものですので)お手数ですがスプーンや箸ですくい取って、お渡しする所定のびんに詰めて当院 放射線治療部までご持参ください。
〜もしもの場合〜 もし小線源治療を施行された患者さんが、不幸にして小線源挿入後1年以内に死亡された場合は解剖をさせて頂きます。その際に前立腺を摘出して病院が保管しなければならないと法律上定められていますので、不慮の事態に備えてお渡しするカード(小線源治療施行証明)を常時ご携行ください。
〜緊急連絡先〜 独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 放射線治療部門 〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1 п@03-3202-7181 内線(2640)
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