国立国際医療研究センターについて

独立行政法人国立国際医療研究センター中期目標

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独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第29条第1項の規定に基づき、独立行政法人国立国際医療研究センターが達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を次のように定める。

 平成22年4月1日

厚生労働大臣 長妻 昭

 

前文

 我が国においては、急速な少子高齢化の進展や、疾病構造の変化、医療技術等の高度化等により医療を取り巻く環境が大きく変化するとともに、国民の医療に対するニーズも変化しており、このような変化に対応した国民本位の総合的かつ戦略的な医療政策の展開が求められている。
  こうした中、国が医療政策を効果的、効率的に推進するため、国立高度専門医療研究センターには、疫学研究等による日本人のエビデンスの収集や高度先駆的医療の開発及びその普及等、我が国の研究、医療水準を向上させ、もって公衆衛生の向上に寄与することにより、医療政策を牽引していく拠点となることが求められている。
  このため、国立高度専門医療研究センターは、国内外の関係機関と連携し、資源の選択と集中を図り、国の医療政策と一体となって、研究・開発及び人材育成に関し、国際水準の成果を継続して生み出し、世界をリードしていくことが期待される。
  独立行政法人国立国際医療研究センター(以下「センター」という。)は、平成5 年に我が国における保健医療分野の国際協力を推進するため設置された国立国際医療センターを前身とし、以来、感染症その他の疾患であって、その適切な医療の確保のために海外における症例の収集その他国際的な調査及び研究を必要とするもの(以下「感染症その他の疾患」という。)及び国際保健医療協力を対象に中心的な役割を果たしてきた。
  また、平成20 年には国立精神・神経センター国府台病院を統合し、その総合診療機能等を有効に活用することとした。
  センターには、これら設立の経緯を踏まえ、新興・再興感染症及びエイズ等の感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患並びに国際保健医療協力を重点分野とし、我が国のみならず国際保健の向上に寄与するとともに、国際水準の医療を強化し、主要な診療科を網羅した総合的な医療提供体制の下に、チーム医療を前提とした全人的な高度専門・総合医療の実践及び均てん化並びに疾病の克服を目指す臨床開発研究を推進することが求められている。

 

第1 中期目標の期間

 センターの中期目標の期間は、平成22 年4 月から平成27 年3 月までの5 年間とする。

 

第2 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項

1.研究・開発に関する事項
(1)臨床を志向した研究・開発の推進

 高度先駆的医療の開発及び標準医療の確立のため、臨床を指向した研究を推進し、優れた研究・開発成果を継続的に生み出していくことが必要である。このため、センターにおいて以下の研究基盤強化に努めること。

 

@

研究所と病院等、センター内の連携強化

 

A

「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」(平成19 年4 月26 日内閣府・文部科学省・厚生労働省・経済産業省)に基づく、産官学が密接に連携して臨床研究・実用化研究を進める「医療クラスター」の形成等、国内外の産業界、研究機関及び治験実施医療機関等との連携

 

B

研究・開発に係る企画及び評価体制の整備

 

C

効果的な知的財産の管理、活用の推進

(2)病院における研究・開発の推進

 治験等の臨床研究を病院内で高い倫理性、透明性をもって円滑に実施するための基盤の整備に努めること。

(3)担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進

 これら研究基盤の強化により、詳細を別紙に示した研究・開発を着実に推進すること。

2.医療の提供に関する事項

 我が国における感染症その他の疾患に対する中核的な医療機関として、国内外の知見を集約し、高度先駆的医療の提供を行うこと。
  また、高齢化社会が進展する中で、課題となっている病気の複合化、併存化に対し、臓器別、疾病別のみならず、患者全体を見る全人的な医療を前提に、総合医療を基盤とした感染症その他の疾患に対する医療の標準化を推進するため、最新の科学的根拠に基づいた医療の提供を行うこと。
  患者・家族に必要な説明を行い、情報の共有化に努めることにより、患者との信頼関係を構築し、また、患者・家族が治療の選択、決定を医療者とともに主体的に行うことができるよう支援することに加え、チーム医療の推進、入院時から地域ケアを見通した医療の提供、医療安全管理体制の充実、客観的指標等を用いた医療の質の評価等により、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供を行うこと。
  地域のニーズに即した質の高い救急医療を提供すること。
  特定感染症指定医療機関として、感染症指定医療機関等と連携し、感染症の患者に対する医療の提供を着実に行うこと。

3.人材育成に関する事項

 人材育成は、センターが医療政策を牽引する上で特に重要なものであることから、センターが国内外の有為な人材の育成拠点となるよう、総合的な医療を基盤として、感染症その他の疾患に対する医療及び研究を推進するにあたりリーダーとして活躍できる人材の育成を行うとともに、モデル的な研修及び講習の実施及び普及に努めること。

4.医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項

 センター及び都道府県における中核的な医療機関間のネットワークを構築し、高度先駆的医療の普及及び医療の標準化に努めること。
  情報発信にあたっては、医療従事者や患者・家族が感染症その他疾患に関して信頼のおける情報を分かりやすく入手できるよう、国内外の感染症その他の疾患に関する知見を収集、整理及び評価し、科学的根拠に基づく診断及び治療法等について、国民向け及び医療機関向けの情報提供を行うこと。

5.国への政策提言に関する事項

 医療政策をより強固な科学的根拠に基づき、かつ、医療現場の実態に即したものにするため、科学的見地から専門的提言を行うこと。

6.その他我が国の医療政策の推進等に関する事項
(1)公衆衛生上の重大な危害への対応

 公衆衛生上重大な危害が発生し又は発生しようとしている場合には、国の要請に応じ、迅速かつ適切な対応を行うこと。

(2)国際貢献

 我が国の国際保健医療協力の中核的機関として、感染症その他の疾患に関する専門的な医療及び国際保健医療協力等の向上を図るとともに、これらに対する調査及び研究並びに技術者の研修を行うこと。

(3)HIV・エイズ

 エイズ治療・研究開発センターは、HIV 裁判の和解に基づき国の責務となった被害者の原状回復に向けた医療の取組を厚生労働省に届いた意見を踏まえつつ着実に実施するとともに、エイズに関し、診断及び治療、臨床研究、診療に関する相談、
 また「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(平成18 年厚生労働省告示第89 号)に基づき、エイズに係る中核的医療機関としてブロック拠点病院等を支援し、地域におけるエイズ医療水準の向上を図ること。

(4)看護に関する教育及び研究

 国立高度専門医療研究センターの職員の養成及び研修を目的として、看護に関する学理及び技術の教授及び研究並びに研修を行うこと。

 

第3 業務運営の効率化に関する事項

1.効率的な業務運営に関する事項

  業務の質の向上を目指し、かつ、効率的な業務運営体制とするため、定期的に事務及び事業の評価を行い、役割分担の明確化及び職員の適正配置等を通じ、弾力的な組織の再編及び構築を行うこと。
  総人件費については、センターの果たすべき役割の重要性を踏まえつつ、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成18 年法律第47 号)や「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18 年7 月7 日閣議決 定)に基づいて人件費改革に取り組むとともに、給与水準に関して国民の理解が十分得られるよう必要な説明や評価を受けるものとすること。
  その際、併せて、医療法(昭和23年法律第205号)及び診療報酬上の人員基準に沿った対応を行うことはもとより、国の制度の創設や改正に伴う人材確保も含め高度先駆的医療の推進のための対応や医療安全を確保するための適切な取組を行うこと。
  また、独立行政法人に関する制度の見直しの状況を踏まえ適切な取組を行うこと。
  センターの効率的な運営を図るため、以下の取組を進めること。

 

@

給与水準について、センターが担う役割に留意しつつ、適切な給与体系となるよう見直し

 

A

共同購入等による医薬品、医療材料等購入費用の適正化

 

B

一般管理費(退職手当を除く。)について、平成21 年度に比し、中期目標期間の最終年度において15%以上の削減

 

C

医業未収金の発生防止及び徴収の改善並びに診療報酬請求業務の改善等収入の確保

2.電子化の推進

 業務の効率化及び質の向上を目的とした電子化を費用対効果を勘案しつつ推進し、情報を経営分析等に活用すること。推進にあたっては職員の利便性に配慮しつつ、情報セキュリティの向上に努めること。

3.法令遵守等内部統制の適切な構築

 法令遵守(コンプライアンス)等内部統制を適切に構築すること。

 特に契約については、原則として一般競争入札等によるものとし、競争性及び透明性が十分確保される方法により実施するとともに、随意契約の適正化を図ること。

 

第4 財務内容の改善に関する事項

 「第3 業務運営の効率化に関する事項」で定めた事項に配慮した中期計画の予算を作成し、当該予算による運営を実施することにより、中期目標の期間における期首に対する期末の財務内容の改善を図ること。

1.自己収入の増加に関する事項

 感染症その他の疾患及び国際保健医療協力に関する医療政策を牽引していく拠点としての役割を果たすため、運営費交付金以外の外部資金の積極的な導入に努めること。

2.資産及び負債の管理に関する事項

 センターの機能の維持、向上を図りつつ、投資を計画的に行い、固定負債(長期借入金の残高)を償還確実性が確保できる範囲とし、運営上、中・長期的に適正なものとなるよう努めること。

 

第5 その他業務運営に関する重要事項

1.施設・設備整備に関する事項

 施設・設備整備については、センターの機能の維持、向上の他、費用対効果及び財務状況を総合的に勘案して計画的な整備に努めること。

2.人事の最適化に関する事項

 センターの専門的機能の向上を図るため、職員の意欲向上及び能力開発に努めるとともに、人事評価を適切に行うシステムを構築すること。
 また、年功序列を排し、能力・実績本位の人材登用などの確立に努め、さらに、優秀な人材を持続的に確保するため、女性の働きやすい環境の整備及び非公務員型独立行政法人の特性を活かした人材交流の促進等を推進すること。

3.その他の事項

 中期目標に基づきセンターのミッションを理解し、ミッションを実現するために必要なアクションプランとして中期計画を立て、具体的な行動に移すことができるようまた、アクションプランやセンターの成果について、一般の国民が理解しやすい方法、内容で情報開示を行うように努めること。
 ミッションの確認、現状の把握、問題点の洗い出し、改善策の立案、翌年度の年度計画の作成等に資するため、定期的に職員の意見を聞くよう、努めること。

 

担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進

1.重点的な研究・開発戦略の考え方

 近年におけるグローバリゼーションの著しい進展に伴い、世界規模での新興・再興感染症の蔓延やアウトブレイクが危惧されるほか、健康指標の地域間格差の拡大と貧困が深刻化する一方、途上国が近代化を進める中でライフスタイルの変化に伴う糖尿病等生活習慣病の激増も大きな問題となってきている。
 このため、センターは、エビデンスを着実に創出し、我が国のみならず国際保健の向上に寄与するため、国際保健医療協力を軸とし、感染症その他の疾患を中心課題として、病院、国際医療協力部、研究所の連携を基盤としながら、これまでの国際保健医療協力の実績を基礎として国内外の医療機関、研究機関、学会との共同研究の一層の推進を図ること。
 また、感染症その他の疾患の発症機序の解明につながる基礎的研究の推進や、疫学研究等による日本人のエビデンスの収集から、予防医学技術の開発、基礎医学の成果を活用した橋渡し研究、臨床に直結した研究・開発等を総合的に進めていくとともに、国際保健医療協力に関する研究を推進すること。
 その実施にあたっては、中期計画において、主な研究成果に係る数値目標を設定するなど、センターが達成すべき研究成果の内容とその水準を明確化及び具体化すること。

2.具体的方針
(1)疾病に着目した研究
 

@ 感染症その他の疾患の本態解明

   

 科学技術のイノベーションを常に取り入れ、分子・細胞から個体に至るものまでを研究対象にすることにより、感染症その他の疾患の疾病メカニズムを解明し、予防・診断・治療への応用の糸口となる研究を推進する。

     
 

A 感染症その他の疾患の実態把握

 

 

 我が国の感染症その他の疾患の罹患、転帰その他の状況等の実態及びその推移の把握、疫学研究による感染症その他の疾患のリスク・予防要因の究明等、感染症その他の疾患の実態把握に資する研究を推進する。

     
 

B 高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進

 

 

 感染症その他の疾患に対する高度先駆的な予防、診断、治療法の開発に資する研究を推進する。
 また、既存の予防、診断、治療法に対する有効性の比較等、標準的な予防、診断、治療法の確立に資する研究を推進する。
 また、高度先駆的な予防・診断・治療法の開発の基盤となる、バイオリソースや臨床情報の収集及びその解析を推進する。

     

 

C 医薬品及び医療機器の開発の推進

 

 

 「新成長戦略(基本方針)」(平成21 年12 月30 日閣議決定)においては、ライフ・イノベーションによる健康大国戦略として、革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発・実用化の促進が求められている。
 この趣旨を踏まえ、感染症その他の疾患に関する研究成果等を安全かつ速やかに臨床現場へ応用するために、医薬品及び医療機器の治験(適応拡大を含む。)
 特に高度に専門的な知識や経験が要求される等実施に困難を伴う治験・臨床研究の実現を目指した研究を推進する。
 また、海外では有効性と安全性が検証されているが、国内では未承認の医薬品、医療機器について、治験等臨床研究を推進する。
 これらにより平成21年度に比し、中期目標の期間中に、臨床研究実施件数(倫理委員会にて承認された研究をいう。)及び治験(製造販売後臨床試験も含む。)の実施件数の合計数の10%以上の増加を図ること。

     
(2)均てん化に着目した研究

 

@ 医療の均てん化手法の開発の推進

 

 

 関係学会等との連携を図り、臨床評価指標の開発並びに診断・治療ガイドライン等の作成及び普及に寄与する研究を推進する。
 感染症その他の疾患に対する医療を担う高度かつ専門的な技術を持つ人材の育成を図るため、系統だった教育・研修方法の開発を推進する。

     

 

A 情報発信手法の開発

 

 

 感染症その他の疾患に対する正しい理解を促進し、患者・家族に対する支援の質を向上させるため、医療従事者及び患者・国民への啓発手法の研究を推進する。

     
(3)国際保健医療協力

国際保健医療協力を推進するため、関係機関と連携し、以下の研究を推進する。

 

@ 国際医療協力の効果的な推進に必要な研究

 

 

世界的な健康格差の是正に向け、国際保健医療協力を効果的に行うために必要な研究を推進する。

     

 

A 国際保健のネットワークの強化に必要な研究

 

 

 国内外の関係機関等との情報共有及び共同事業の実施等諸協力を推進するため、国際保健分野のネットワーク強化に必要な研究を実施する。