日本の肝細胞癌の約20%はHBVの持続感染、約75%はHCVの持続感染に起因する。

超音波検査は無侵襲で手軽に行えるスクリーニング法として肝癌の早期発見に有用であるが、一方で診断能は術者の技量に左右される検査である。このことから肝癌の早期発見には高危険群(ウイルス性慢性肝炎・肝硬変)症例の詳細なスクリーニングが重要であると考えられる。一般的に肝硬変では右葉が萎縮しており、正常肝では病変検出頻度の高い肋弓下走査で良好なイメージが得られにくい。この場合には左側臥位での走査が有用である。また肝癌の早期発見のためには肋間走査が重要であるため通常用いるコンベックスプローブのほかに、音響窓が小さく肋間の狭い患者でも比較的良好なイメージの得られるセクタプローブやマイクロコンベックスプローブを用いて観察することも検査精度を向上させるのに寄与する。またティッシュハーモニックエコー(tissue harmonic image, THI)では従来の基本波による画像よりも画質が向上し腫瘤性病変の検出感度は上昇する。
C型肝炎を母地とした肝細胞癌の場合、線維化の程度に応じて発癌率に明らかな差が存在する。慢性肝炎でもその繊維化が軽度(F1)、中等度(F2)、重度(F3)のものから肝硬変(F4)に進展するに従い年率発癌率も0.5%⇒1.5%⇒3.0%⇒5~7%と著明に上昇する。また肝硬変の進行に伴い内部エコーが粗造となり超音波検査では腫瘍性病変の検出が困難となる場合もある。従って超音波検査での経過観察はウイルス性慢性肝炎では3〜6ヶ月、肝硬変では3ヶ月に1回施行すべきである。さらに肝実質像が粗造な場合は造影CT検査あるいは造影MRI検査を追加することが必要である。
肝癌診療ガイドラインには定期的スクリーニングの推奨として「超音波検査と腫瘍マーカーの併用による肝細胞癌スクリーニングを軸とし、肝硬変症例などの超危険群ではdynamic CTまたはdynamic MRIを併用する。」と記載されている。肝癌のCT診断の基本はdynamic CTによる造影増強パターンによる診断である。肝癌の血流支配は動脈性、肝実質は門脈優位であり、肝動脈優位相では肝癌が実質に比べ高吸収、平衡相では肝実質の増強効果がある程度持続するのに対し肝癌からは造影剤のwash outが進むため、肝癌が肝実質よりも低吸収に描出される。読影時にはその画像が動脈優位相・門脈優位相・平衡相のどのタイミングにあたるかを意識して評価することが重要である。造影剤としてCTではヨード造影剤、MRIでは細胞外液性ガドリニウム(Gd)造影剤を用いることが一般的である。しかし肝細胞癌の多段階発育の過程で動脈血流に乏しい結節の場合は、SPIO造影剤を用いたMRIが有用である。現在使用可能なSPIO造影剤はフェルモキシデス(フェリデックス○R)およびフェルカルトボトラン(リゾビスト○R)であり、T2強調像で信号が低下する陰性造影剤である。SPIOはKupffer細胞を主体とした肝網内系組織に取り込まれ、従って網内系を有さない結節は相対的に高信号となる。従って造影CTやGd造影MRIなどの血流診断とは異なった質的診断が可能である。SPIO-MRIが陽性所見であれば肝細胞癌である可能性が高く次のステップの検査(CT-Angiographyや腫瘍生検)が必要である。SPIO-MRI施行時の留意点として肝硬変進展例ではKupffer細胞機能失調や細胞数減少があり相対的に病変検出能が低下する可能性がある。
2008年1月より新しい肝特異性MRI造影剤Gd-EOB-DTPAが臨床使用可能となった。この造影剤は細胞外液性造影剤であるGd-DTPAと脂溶性側鎖であるエトキシベンジル基(EOB)からなり、この側鎖EOBにより肝細胞特異性を有する。血中を流れているGd-EOB-DTPA分子はOATPI(organic anion transporter polypeptide)というペプチドと結合し、肝細胞内に輸送させ毛細胆管に入り胆汁中に排泄される。このことにより投与量の約40%が胆汁中に排泄され、残りは腎臓から排泄される。Gd-EOB-DTPAは血流評価(ダイナミック相)と肝細胞相(投与20分以降)の2つの相の評価が可能であり、典型的な肝細胞癌ではダイナミック相(動脈優位相)で白くそまり、肝細胞造影相では周囲肝は白くそまり腫瘍部は黒くなる。
肝癌の腫瘍マーカーとしてはAFP,PIVKA-U,AFPレクチン分画(AFP-L3)の3種が保険適応となっている。AFPは分子量約7万で、4%の糖を含む糖蛋白である。胎生期には生理的に体内に存在し、成人における正常値は10ng/ml以下である。PIVKA-Uは肝で合成される凝固活性がない異常プロトロンビンであり、1989年3月から保険適応になっている。肝細胞癌由来AFPでは良性肝疾患由来AFPに比較してレンズマメレクチンに親和性を有する分画の増加を認め、L3分画として保険収載されている。現行の健康保険制度上は肝硬変、HBs抗原またはHCV抗体陽性の慢性肝炎の患者について、AFPおよびPIVKA-Uが月に1度算定できる。AFP-L3分画は診療および腫瘍マーカー以外の検査から悪性腫瘍が強く疑われる場合のみ算定可能である。ガイドラインでは小肝細胞癌の診断においては2種類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されている。3cm以下の肝細胞癌に対するAFPの感度はカットオフ値を20 ng/mlとすると23.7-63.7%・特異度は49.1-83.1%、PIVKA-Uはカットオフ値を40 mAU/mlとすると感度27.6%・特異度94.7-95.9%、AFP-L3分画はカットオフ値を10とすると感度22.2-33.3%・特異度93.0-93.8%であった。一方3cm以下の肝細胞癌に対するAFP+PIVKA-Uの感度は83%・特異度は84%であった。このように小肝癌において2種の腫瘍マーカーを測定することで感度が上昇し、特異度の低下も最小限に抑えることが可能である。AFPが慢性肝疾患で上昇すること、またビタミンK欠乏や抗凝固療法施行中の患者ではPIVKA-Uが肝細胞癌以外の原因で異常高値となることに留意すべきである。
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma; HCC)は大多数がB型・C型ウイルス性肝障害を背景として発症する。そこで他臓器の悪性腫瘍と異なる特徴が2点みられる。1つはもともと慢性肝炎や肝硬変にHCCが合併するため、肝予備能が低い点である。HCC症例の治療にあたっては腫瘍側因子だけでなく、肝硬変の進展による肝予備能の悪化を考慮したうえでその治療方針を決定する必要がある。もう1点は一旦HCCに対して根治治療がなされても、肝内他部位に再発が高い頻度でみられる点である。再発によってその予後が大きく異なってくるため、もともとの肝障害の成因が重要な予後因子となってくる。
@本邦では原発性肝癌の90%以上がHCVまたはHBV感染を背景に発症する。よって慢性肝疾患(慢性肝炎・肝硬変)を合併する症例が大多数である。
A肝臓全体の発癌ポテンシャルが高いため(HCVやHBV感染および肝線維化などにより)初回治療が成功しても肝内再発率が高い(C型肝硬変では年間20%超)。
したがって肝細胞癌の治療では肝癌の進行度と肝予備能の両者を考慮して治療方針を決定する必要がある。
肝癌診療ガイドラインでは肝癌の治療法は肝障害度・腫瘍数・腫瘍個数により規定される。
| 項目\肝障害度 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 腹水 | ない | 治療効果あり | 治療効果少ない |
| 血清ビリルビン値 | 2.0未満 | 2.0-3.0 | 3.0超 |
| 血清アルブミン値 | 3.5超 | 3.0-3.5 | 3.0未満 |
| ICG R15(%) | 15未満 | 15-40 | 40超 |
| プロトロンビン活性値(%) | 80超 | 50-80 | 50未満 |

| 1年生存率 | 3年生存率 | 5年生存率 | |
|---|---|---|---|
| 2cm以下単発肝切除 | 96.9% | 89.0% | 76.1% |
| 2cm以下単発ラジオ波治療 | 97.8% | 88.7% | 83.8% |
| 2cm-5cm単発肝切除 | 94.8% | 80.2% | 65.6% |
| 2cm以下2個肝切除 | 92.7% | 81.8% | 60.5% |
| 2cm以下2個ラジオ波治療 | 98.0% | 85.6% | ― |
| 1年生存率 | 3年生存率 | 5年生存率 | |
|---|---|---|---|
| 2cm以下単発肝切除 | 93.7% | 79.0% | 58.3% |
| 2cm以下単発ラジオ波治療 | 97.2% | 82.3% | ― |
| 2cm-5cm単発肝切除 | 90.8% | 70.3% | 50.6% |
| 2cm以下2個肝切除 | 91.8% | 68.5% | 50.8% |
| 2cm以下2個ラジオ波治療 | 97.3% | 69.2% | ― |
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン(図2)によると、肝障害度がAまたはBと比較的肝機能が良く、腫瘍個数が3個以下の場合に適応となる。門脈や肝静脈などの浸潤がみられる場合には、各施設の治療方針に従う。
肝細胞癌(HCC)に対して経皮的治療が行われたのは1980年代に超音波ガイド下でエタノール局注療法(percutaneous ethanol injection;PEI)が行われたのが始まりである。しかしPEITでは治療腫瘍内に均一にエタノールがいきわたらないことや、被膜および被膜外に浸潤した腫瘍細胞に対して効果が乏しいという欠点があるため、しだいに第一選択として施行されなくなった。その後、局所腫瘍細胞をより効率的に壊死させる目的でマイクロ波凝固療法が1994年から施行され始めた。1996年に健康保険で治療できるようになったため、全国数施設で施行されたが、1回の治療機会で壊死できる範囲が小さいため、腫瘍径2cm以下の小さい肝細胞癌に対して施行されるのみであった。マイクロ波治療は腹腔鏡下に行う場合に確実に治療できる利点があるが、経皮的な治療は特別な施設を除いて施行されなくなってきている。1999年にラジオ波焼灼術が導入され、1回の通電で壊死範囲が直径3cmに拡大したため、多くの施設で行われるようになった。その後、ジェネレーターや電極針の改良が行われ、より確実に安全に施行できるようになってきており、欧米を中心としてその有用性が認識されてきている。
RFAに用いるジェネレータとハンドピースは主として1999年よりわが国で使用されている。現在使用されているのは、展開針を用いるRITA社(図1a)とRTC社のものと、展開しない1本の電極を用いるRadionics社(図1b)のものがある。RITA社・RTC社のジェネレータは150Wまで出力が供給できるタイプのものが主流になっている。
経皮的RFA治療の対象となるHCCは、腫瘍径3cm以下かつ腫瘍個数3個以下が適応として選択される場合が一般的である。RFAにおいては1回の通電で得られる壊死領域が3cmであり、局所に腫瘍細胞を残存させないために、safety marginとして周囲5mmの非腫瘍部を含んだ領域を焼灼することが必要となる。したがって3cmを超える腫瘍については特別な工夫をしないと確実な焼灼が得られない。
RFA1〜5日後にダイナミックCTスキャンを撮影し、治療効果を判定する。ダイナミックCTスキャン動脈相で造影効果が消失しているか否かを確認する。一般に治療前のCTスキャンと比較して、治療域が全周にわたって5mm以上のマージンが確保されていれば、局所根治と判定される。
少なくとも局所再発率を年率10%以下にするように確実な焼灼を行うことが必要である。
最近、肝動脈をバルーン閉塞して壊死範囲を拡大する試みがなされている。
RFAの合併症として出血や播種など穿刺に由来するもの、周囲臓器損傷、穿刺経路の合併症、がみられ留意すべきである。また後期には肝膿瘍や胆管損傷、肝梗塞がみられる。
本格的に肝細胞癌の治療に用いられるようになったのはSekiら経皮的に穿刺可能な針電極を開発したことがきっかけになっている。マイクロ波とは周波数1〜30GHzの電磁波のことを指し、電子レンジに使用されている。医療用としては2,450±50MHzのものが用いられ、通電によって水分子の運動による摩擦熱が生じ、腫瘍部の熱凝固を生じさせる治療法である。深部用電極針(16G)を超音波ガイドに穿刺し、60〜70Wの電流を1ないし2分間通電することによって、大きさ2.5×1.5cmの凝固範囲が得られる。1996年に健康保険に収載され、いくつかの施設で施行されている。
しかし、経皮的MCTの欠点は1回の通電で得られる壊死範囲が狭いことである。したがって複数本穿刺など技術面での工夫を要する。また胆管損傷や肝膿瘍の合併が少なからずみられるためMCTでHCC結節を根治させるためには習熟を要する。しかし、RFAを行った場合に止血困難例ではMCTが有用なことがあり、RFAを行う執刀医はMCTを使いこなせることが望ましい。
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインによると、肝障害度AまたはBで、かつ腫瘍径3cm以上か3個以上の場合に選択される。高ビリルビン血症のない肝細胞癌破裂症例の治療には救急TA(C)Eが有効である。多発性小型肝細胞癌および肝動脈末梢枝が栄養する結節型の血流豊富な肝細胞癌はTA(C)Eの適応となるものも存在する。
大腿動脈よりカテーテルを挿入し、固有肝動脈より遠位部まですすめ肝細胞癌が造影剤で濃染されることを確認した後TACEを施行する。抗がん剤とリピオドールをまず動注した後、ゼラチンスポンジを用いて塞栓する場合をTACEと呼称し、ゼラチンスポンジによる塞栓のみを行う場合にはTAEと呼称する。
肝細胞癌は主として動脈血流から栄養されており癌以外の部分は門脈からも血流があるため、動脈を塞栓すれば癌だけが壊死に陥り非癌部は祖血効果の影響は少ない。
日本肝癌研究会の集計ではTA(C)Eのみで治療した場合の5年生存率は10%台と低いため、局所療法など他の治療との組み合わせが必要である。
CLIP score Cancer of the Liver Italian Program
| Score | |||
|---|---|---|---|
| Variable | 0 | 1 | 2 |
| Child-Pugh | A | B | C |
| Tumor morphology | Uninodular and extention?50% | Multinodular and extention?50% | Massive or extention>50% |
| AFP(ng/ml) | <400 | ?400 | |
| Portal Vein thrombosis | No | Yes | |
JIS score Japan Integrated Staging Score
| Score | ||||
|---|---|---|---|---|
| Variable | 0 | 1 | 2 | 3 |
| Child-Pugh Stage | A | B | C | |
| TNM stage | T | U | V | W |
*TNM stageは日本肝癌研究会の進行度分類
このステージ毎に生命予後が異なるため、JISスコア毎に症例の予後解析を行う必要がある。