B型慢性肝炎の治療ガイドライン
●治療対象は、ALT≧31 IU/L以上で、
HBe抗原陽性は、HBV DNA量5 log copies/mL以上
HBe抗原陰性は、HBV DNA量4 log copies/mL以上
肝硬変症例では,HBV DNA量3 log copies/mL以上
〔35歳未満の場合〕
- HBe抗原陽性:
- ≧7 log copies/mL
- @IFN長期投与(24-48週間)
- Aエンテカビル
- <7 log copies/mL
- @IFN長期投与(24-48週間)
- Aエンテカビル
- HBe抗原陰性:
- ≧7 log copies/mL
- @ Sequential療法(エンテカビル; IFN連続療法)
- Aエンテカビル
- <7 log copies/mL
- @ 経過観察
- A IFN長期投与(24週)
(但し血小板15万以下またはF2以上の進行例には最初からエンテカビル)
〔35歳以上の場合〕
- HBe抗原陽性:
- ≧7 log copies/mL
- @エンテカビル
- ASequential療法(エンテカビル; IFN連続療法)
- <7 log copies/mL
- @エンテカビル
- AIFN長期投与(24-48週間)
- HBe抗原陰性:
- ≧7 log copies/mL
- <7 log copies/mL
- @エンテカビル
- AIFN長期投与(24-48週間)
ラミブジン投与中B型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ製剤治療ガイドライン
| ラミブジン投与期間 |
| HBV DNA | 3年未満 | 3年以上 |
| <1.8 log copies/mL持続 | エンテカビル 0.5 mg/日に切り替え可能 | ラミブジン 100 mg/日を継続 |
| ≧1.8 log copies/mL | VBT*なし |
エンテカビル 0.5 mg/日に切り替え可能 |
| VBT*あり | アデホビル 10 mg/日を併用 | アデホビル 10 mg/日を併用 |
* VBT: viral breakthrough
B型慢性肝炎の治療(ガイドラインの補足-1)
- B型慢性肝炎の治療は、35歳未満はdrug freeを目指してIFNを基本とする。35歳以上は、HBV DNAの持続的陰性化を目指して、初回核酸アナログ製剤はエンテカビルとする。一方、Lamivudine及びEntecavir 耐性株に対しては、Lamivudine+Adefovir併用療法を基本とする。
- B型肝炎は、HBV genotypeにより治療効果が異なるため、genotypeを測定して治療法を決定することが望ましく、特に、genotype A,Bは、35歳以上でもIFNの効果が高率であることから、第一選択はIFN投与が望ましい。
- IFNの投与期間は、24週間を原則とするが、有効症例(HBV DNA低下、ALT値正常化)は、48週間投与が望ましい。
B型慢性肝炎の治療(ガイドラインの補足-2)
- IFN在宅自己注射可能な症例は、QOLを考慮して在宅自己注射を推奨する。
- 母子感染例はIFN抵抗性のことが多く、Sequential療法(Entecavir+IFN連続)も選択肢のひとつとなる。
- 肝硬変および肝細胞癌治癒後の症例も、核酸アナログの治療を行う。
- 抗ウイルス療法は、ALT値が≧31IU/Lの場合に考慮する。35歳以上では、ALT正常値でもウイルス増殖が持続する症例は抗ウイルス療法の対象となる。しかし、高齢者やHBe抗原陰性例、抗ウイルス剤の投与が難しい例では肝庇護療法(SNMC、UDCA等)で経過をみることも可能である。
- HIVを合併症例では、Entecavirの使用によりHIV耐性ウイルスが出現する可能性があるため、Entecavirは使用できない。
- HBV DNA量が低値・ALT値が正常であっても、免疫抑制作用のある薬剤や抗がん剤投与時にはHBV DNA量が上昇して高度の肝障害をきたすことがあるため注意が必要である
最新の情報
B型慢性肝炎の治療として、米国では、インターフェロンα-2b、核酸アナログ製剤としてラミブジン、アデホビルが米国食品医薬局(FDA)により認可された。近年、さらに核酸アナログ製剤の中で現在のところ最も耐性ウイルスの出現率が低いとされるエンテカビル、薬剤の血中濃度の半減期を延長させて週一回の投与を可能にしたペグインターフェロンα-2a、α-2bが認可された。日本においても、同様にインターフェロン、ラミブジン、アデホビルが認可され、2006年にエンテカビルが認可された。ペグインターフェロンについては、現在α-2aのみが治験中であり、α-2bの治験は行われていない。
海外の臨床試験によると、核酸アナログ未使用のHBe抗原陽性B型慢性肝炎症例に対して,エンテカビルとアデホビルのrandomized international studyが組まれたが,エンテカビルの方が高い抗ウイルス効果を認めた.また日本ではまだ認可になっていないが,抗HBV活性を持つテノホビルとアデホビルのrandomized studyが行われ,テノホビルがアデホビルより抗HBV活性が強いことが示されている. HBe抗原陽性のB型慢性肝炎症例に対し、ラミブジン単独群に比較して、ペグインターフェロンα-2a単独群、併用群で、ALTの正常化、HBV DNAの低下において有意に良好な結果が示されている。HBe抗原陰性の症例に対しても、ラミブジン単独群に比較して、ペグインターフェロンα-2a単独群、併用群で、ALTの正常化、HBV DNAの低下、HBs抗原の陰性化において有意に良好な結果が示されている。また、核酸アナログ未使用症例においてエンテカビル投与による耐性ウイルスの出現率は2年で1%未満であり、ラミブジンやアデホビルに比べて低いことが報告されている。また、新たな核酸アナログ製剤である、テルビブジン、テノホビル、クレブジンなどの臨床試験が海外で進められており、B型慢性肝炎の治療は数年内にさらに進歩することが予測される。
B型慢性肝炎の予後は、核酸アナログ製剤の登場により、確実に改善されてきているが、耐性株出現、高額の薬剤費、薬剤の切り替え、投与終了後の再増悪など、解決しなければならない問題も多い。
参考文献
- 1) Leung N, Peng CY, et al: Early hepatitis B virus DNA reduction in hepatitis B e antigen-positive patients with chronic hepatitis B: A randomized international study of entecavir versus adefovir. Hepatology. 49(1):72-9, 2009
- 2) Marcellin P, Heathcote EJ, et al: Tenofovir disoproxil fumarate versus adefovir dipivoxil for chronic hepatitis B. N Engl J Med.;359(23):2442-55, 2008.
- 3) Anna S. F. Lok, et al: Chronic hepatitis B. Hepatology 45:507-539, 2007
- 4) Jay H. Hoofnagle, et al: Management of hepatitis B: Summary of a clinical research workshop. Hepatology 45:1056-1075, 2007
- 5) George K.K. Lau, et al: Peginterferon alfa-2a, lamivudine, and the combination for HBeAg-positive chronic hepatitis B. N Engl J Med 352:2682-2695, 2005
- 6) Patric Marcellin, et al: Peginterferon alfa-2a alone, lamivudine alone, and the two in combination in patients with HBeAg-negative chronic hepatitis B. N Engl J Med 351:1206-1217, 2004
- 7) Keeffe EB et al: New and emerging treatment of chronic hepatitis B. Clin Gastroenterol Hepatol 5: 285-294, 2007